今年のノーベル医学賞で浮き彫りになった、「夜間勤務」の危険性

 

ショウジョウバエの仕組みとほぼ同じメカニズムが人間にもあり、生活のリズムと体内の時計とがうまく同期しなくなるとがんや精神性疾患代謝疾患などのリスクが高まることが確かめられ、最近は「人の働き方」についても、時計遺伝子の面から調べる研究が進んでいるのです。

例えば、早出や夜勤など勤務の交代制がある職場で働く人を対象に行なった実験では、“ヒゲ”を利用して、体内時計と勤務の関係を調べました。

勤務中の人たちにひげや髪の毛を3時間に1回、抜いてもらい毛根の細胞を調べたのです。

その結果、早出と遅出のシフトが1週間ごとに入れ代わるシフト勤務についている人の場合、睡眠や食事の時間が7時間ほどズレが生じるのに対し、体内時計の変化は2時間程度。

体内時計が勤務時間の変動についていけなかった

すると内臓は“就寝時間”になっているのに、無理に働くことになり健康に大きな影響が出る。

“不自然な勤務”が、動脈硬化高血圧肥満糖尿病などの引き金になってしまうのです。

それだけではありません。

WHOの調査では、乳がん前立腺がんなどの、性差に特徴のあるがんで大幅にリスクが上がると指摘。デンマークでは、看護師さんなどの交代制勤務をする人が乳がんにかかった場合、労災の対象になるとされています。

また、昨年にはハーバード大学などの共同研究グループが「看護師」の夜勤が心身に与えるという研究結果を発表。この調査は、約7万5000人分というサンプル数の多さに加え、1988年から2010年まで22年間も縦断的に行われたもので、信頼性が極めて高いのがウリです。

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