安倍総理もホッとした、「小池ファースト劇場」の自滅

 

9月18日に各メディアが臨時国会冒頭解散の見方を報じた。ここから、前原氏の小池氏に対するアプローチが始まった。野党が一つにならなければ「受け皿」になれないと働きかけた。小池氏は色めきたった。

9月24日に二人が電話で話したさい、小池氏は「私が(新党の)代表なら興味ある?」と聞いた。前原は「興味ある」と即答したといわれる。小池の腹は決まった

こうして迎えたのが9月25日である。安倍総理が解散表明の記者会見をする直前をねらって小池氏は「希望の党」旗揚げと代表就任を宣言した。

翌26日朝、共産党との選挙協力に反対する連合の神津里季生会長のもとを、前原氏が訪れ、希望の党への合流構想を打ち明けた。その深夜、小池、前原、神津の三氏が会い、「政権交代に向けて力を合わせよう」と確認し合ったという。

前原氏はこう考えていたのではないか。

もし、政権交代が実現するとしたら、小池氏の人気のたまものである。だからといって、小池氏の天下がいつまでも続くわけではない。都知事としてすでに限界が見えはじめていたように、やがて小池氏の勢いは衰える。そうなると、いつかは代表選の結果しだいで前原氏が総理になる芽も出てくるかもしれない。

小池氏は「政権交代選挙」に胸躍らせながらも、総理への道を思い描くほどに、前原氏への警戒感も強めていったはずだ。

このまま前原ペースで進めば、自公の言う通り、希望の党は看板をかけ替えただけの偽装民進党になってしまう。それだけは我慢がならない。

小池氏は民進党色を薄めることばかりに気を取られていった。そのためか、肝心の安倍政権との対決構図を明確に描ききれないジレンマに陥った。

小池氏が民進党色を薄めるためにとった主な手段は、安保法制と憲法改正に反対する候補者を排除することと、日本維新の会との間の奇妙な候補者調整だ。

もちろん、安倍礼賛政党「日本のこころ」の中山氏を入党させたのも、個人的関係だけでなく、右派色を加える狙いもあっただろう。

だが、こうしたことによって、明確に敵を見据えて、そのブラックボックスを暴くはずの小池劇場は敵と味方がよくわからないカオスの状態になってきた。

安倍首相の大義なき解散や、森友・加計疑惑を招いた特区制度の矛盾について批判するが、疑惑にスパッと斬り込むようなことはしない。

おまけに、加計疑惑の登場人物の一人でもある竹中平蔵氏の仲介で松井大阪府知事と手を握る。これでは、本気で安倍政権を倒す気概があるのか、疑いたくもなる。

もっとも、前原氏はこのような状況になることをある程度、予測していたであろう。民進党左派といわれる人たちを、希望の党のふるいにかけることで、民主党時代からしばしば見られた理念対立に終止符を打ちたいという思いがあったかもしれない。

しかし連合は小池氏の「選別」に不満を募らせ、希望の党への支援をとりやめた。民進党出身者の個別的な選挙支援しか行なわないという。希望の党の独自候補者は連合の組織的な応援が得られないことになる。自らの欲が招いたとはいえ、小池氏にとっては思惑はずれに違いない。

こうしたことから、かえって小池氏の総理への道は険しくなり、これまで意図的にぼかしていた衆院選出馬について小池氏は完全否定しはじめた

安倍首相と小池氏とのタカ派的共通性がクローズアップされたことで、むしろ、自民党支持層の票が希望の党に相当程度流れる可能性もある。自民党は「野党分断」とほくそ笑んでいる場合ではない。

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