さっそく、ポイントを見て行きましょう。
矢野は、没落した家に育った。そのため、絶えず将来の不安について考える癖がついてしまった。商売でも、先の怖さばかりを読む
「恵まれている立場よりも、実際には、恵まれない立場にいる方が、その状況から頑張れるからいいんです。自分が恵まれた瞬間に力がどんどん落ちていくと思っていますから。自分は、大した人間ではないのに、こんなに偉い人にしてくれて申し訳ない。ありがたいというのを超えて、申しわけないと思っています」
「やはり、いかに魅力的な商品を並べるか。100円で、100円のものしか買えなかったら、お客さんは興味を持ちません。100円で、これだけのものが買えるのか、と思ってもらわないとダメなんです」
父親に怒鳴られた幼少期の矢野は、父親のように医者になろうなんて、まったく思いもしなかった。<医者みたいな貧乏なものになるもんか>
<家は、貧乏だ。学生なら、お金をかけずに結婚式ができる>
矢野は、学生結婚を機に、「栗原」という苗字を捨てた。
<将来、ワシは商売で生きていく>
そこで、思案した。商売をするには、屋号が大事だ。クリハラ商店、クリハラ物産、クリハラ商事。四文字は、長すぎる。いっぽう、妻の苗字は、「矢野」だ。ヤノ商事、ヤノ物産、ヤノ商店。二文字の方が言いやすいし、親しまれやすい
ふすまで仕切られただけの安い粗末な部屋に、家族三人で入った。長男の寿一は、素直な気持ちを言葉にした。「ここに、泊まるん……?」
おどおどしている寿一の目を見て、妻の勝代がはしゃぐようにいった。
「わー、寿一、今日、ここに泊まるんよ。いい部屋じゃねえ。よかったねえ。嬉しいねえ。これから、東京へ行って、三人で生活するんよ。がんばろうね」
包み込むような笑顔に、寿一もほっとしたようだった。そのふたりの姿を見て、矢野自身が、誰よりも高ぶっていた心を落ち着かせることができた。矢野は、妻を見直した。<こいつ、すごいのォ>
<自分の儲けを考えていたら、商売なんてできん。ワシは、客が驚く姿が見たかったんじャ。客が喜んでくれればそれでええ。その分、ワシは売って売って儲けを出すんじャ>
「夜逃げしやすい会社がいい会社」(家田美智雄)
<今日の否定。それができることが鈴木会長のすごいところだ>
ビジネスパーソンが勉強のために読むには、ちょっと教訓部分の抜き出しがしづらい本で、どちらかというとノンフィクションとして読んだ方がいいかもしれません。
4,000億円企業がいかにして伸びてきたかを学ぶことは、起業家にとって良い参考になると思います。ぜひチェックしてみてください。
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