スイス本社も絶賛。ネスレ日本が起こした「ジャパンミラクル」とは

 

考える力&眼力を養う~イノベーションアワード

ネスレ日本の「イノベーションアワード」は年に1度行われる社内コンペ。社員から新しいアイデアを募集し、それを実行させ、さらにその成果を見るというコンテストだ。

最初は80件しか応募がなかったが、今や4700件。社員の中に新しいものを発想するという機運が高まった。過去に大賞を受賞したのは、前述の高級志向の専門店「キットカットショコラトリー」。そしてオーブントースターで焼く「焼きキットカット」は、これまでにない食感で、チョコレートの売上げが落ちる夏場の需要を開拓した。

去年、大賞を受賞したのは飲料事業本部の國寶(こくほう)友幸。「オープンするまで全然わからなかった。手応えもなかった。オープンしてからすごく反響があって想定以上の結果が出ました」と言う。

阪急電鉄服部天神駅。人影もまばらな平日の夕方、ホームの一角に人が集まっていた。国寶がイノベーションアワードで大賞をとった「ネスカフェスタンド」だ。

まず解決したのがお客の利便性。コーヒーや宇治抹茶など9種類が一杯100円で手軽に飲める。電車の待ち時間リラックスタイムにしたのだ。定期券型の回数券も作った。980円で大人は12杯。学生だと15杯飲めるから、一杯65円とかなりお得だ。

もともとその場所には売店があったが、コンビニに押されて売り上げが激減。電鉄会社も困っていたという。スタンドがその問題も解決した。売れ行き好調なため、当初の5駅から今では19駅にまで拡大した。

駅のホームを管理する事業者は「今まで通っていたお客様プラス、新しいお客様の幅を広げるといい形で、我々としてはこのプロジェクは非常にやってよかったなと。街の活性化の一部として我々の駅、お店を利用して頂けたらいいかなと考えております」(エキ・リテール・サービス阪急阪神・米田善擴さん)と言う。

「おかげさまで阪急さんとの取り組みによって全国の鉄道会社さんからも『どういった取り組みをしているの?』というお問い合わせを頂いております。なにかのご縁があれば、ぜひ全国的にも広げていきたい」(國寶)

一方、長野県北部にある小谷村。人口わずか3000人のこの村では、過疎と高齢化が進んでいる。ここでネスレ日本は高齢化社会を見据えた取り組みを始めていた。

コーヒーが大好きだという竹田清隆さん(83歳)のお宅には、タブレット端末とコーヒーマシンがセットされている。

竹田さんが「コーヒーお願い」と話しかけた。機器が「カップは置きましたか?」と答える。「置きました」と言うと、「コーヒーを淹れますね」と答え、コーヒーが自動的に入るという仕組みだ。

これはスマホやタブレットと連動する次世代型コーヒーマシンの「バリスタi」。ソニーの音声認識技術を使い、声をかけると自動でコーヒーを淹れてくれる

機能はそれだけではない。「バリスタi」でコーヒーを淹れると、離れて暮らす家族やヘルパーにメールが届く。これで今日も元気だということが分かる。それに対して返信のメッセージをすると、それも音声となって竹田さんに届くのだ。

コーヒー1杯がシニアの生活を見守る。これが高齢化時代に向けたネスレの問題解決だ。

~村上龍の編集後記~

ネスレ、ネスレ日本、両社とも歴史的な企業だが、常に「先端的」だ。

印象的だったのは、「イノベーション」という言葉のとらえ方だ。ウォークマン、カップ麺など、画期的な製品・商品開発がイノベーションだと、どこかでずっと思いこんでいた。

商品・製品が、消費者の手に入るまで、すべての過程に、イノベーションは存在すると、高岡さんに教わった。

創造的な思考をミもフタもなく長時間続けること」。まさに、真理だ。「アイデアが出ない」という言い訳が無効になる。

アイデアが出ないわけではない、充分に考えていない、だけなのだ。

<出演者略歴>

高岡浩三(たかおか・こうぞう)1960年、大阪府生まれ。1983年、ネスレ日本入社。2005年、ネスレコンフェクショナリー社長就任。2011年、ネスレ日本社長兼CEO就任。

image by: 

source:テレビ東京「カンブリア宮殿」

テレビ東京「カンブリア宮殿」

テレビ東京「カンブリア宮殿」

この著者の記事一覧はこちらから

テレビ東京系列で毎週木曜 夜10時から放送。ニュースが伝えない日本経済を、村上龍・小池栄子が“平成カンブリア紀の経済人”を迎えてお伝えする、大人のためのトーク・ライブ・ショーです。まぐまぐの新サービス「mine」では、毎週の放送内容をコラム化した「読んで分かる『カンブリア宮殿』~ビジネスのヒントがここにある~」をお届けします。

bnr_720-140_161104

print
いま読まれてます

  • スイス本社も絶賛。ネスレ日本が起こした「ジャパンミラクル」とは
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け