そしてさらに大きな問題が、セキュリティです。ハッカー大国である中国では、モバイル決済にハッカーが侵入し、架空の取引を行う危険性が大きいでしょう。取引額が大きいだけに標的にされやすく、個人情報の流出なども危惧されます。
中国のモバイル決済はまだプリペイドカード方式に近く、モバイル決済機関はあらかじめ顧客から資金を集めて決済しています。そして取り扱っている業者の多くが非正規の金融機関だという点です。そのため、モバイル決済機関がもし危機に陥った場合、そこに預けた客の資金は保全されないという問題もあります。
そのため「網聯」では、決済機関が顧客から集めた資金の一部を供託金としてプールして、もしものときに備えようとしていますが、現状ではまだまだ不十分です。
もしもハッカーが中国人の世界中でのモバイル決済に不正アクセスし、莫大な支払いが生じた場合、モバイル決済機関が破綻し、中国人顧客の資金も保全されず、さらには海外での支払いも麻痺します。そうなれば、世界的な金融危機の引き金になりかねません。
昨年、中国はサイバーセキュリティ法を導入しました。これは中国政府に対して、中国国内の個人、企業のすべての情報開示を命じるものですが、これは外国企業にも適用されており、企業のセキュリティに関するソースコードまでも中国当局に開示する必要が出てくるともいわれています。
企業にとってトップシークレットであるセキュリティの内容を中国政府に握られること自体がリスクですし、そこから外部に漏洩する可能性も大です。賄賂社会であり共産党幹部の腐敗が当たり前の中国では、「地獄の沙汰もカネ次第」だからです。
「上に政策あれば下に対策あり」の中国では、中国政府がセキュリティや個人・企業の情報を中国が管理すれば、その網から逃れるためのさまざまな新たなサービスが生まれてくるでしょう。そのいずれに加わっても、個人や企業にとってはリスクなのです。
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