なぜ「パンク」すぎるビール企業はマスメディアを使わないのか

BDR1
 

マスメディアに頼らずSNSを中心としたプロモーションで注目を集める英国のブリュワリー「ブリュードック」。日本でもファンが多いこの企業のこだわりと、成功の秘訣とは? 今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』では著者でMBAホルダーの青山烈士さんが、同社の戦略・戦術を詳しく分析し解説しています。

企業文化を中心に据えた戦略

急成長している英国の新興クラフトビールメーカーを分析します。

ブリュードッグ

戦略ショートストーリー

本物志向の方をターゲットに「ビールに対する熱い思い」や「パンクの精神」に支えられた「従来のビールでは体感出来ない美味しさ」等の強みで差別化しています。

SNSを中心にしたオープンなプロモーションで注目を集め、受賞歴を持つ多数のこだわりのクラフトビールの味を体験した顧客から熱狂的な支持を得ています。

分析のポイント

企業文化を中心に据えた戦略

ブリュードッグの創業者の一人であるジェームズ・ワット氏が企業を経営するうえで重視している3本の柱があります。

それは何かというと

一つ目が、企業文化
二つ目が、核となる商品の質
三つ目が、粗利

です。特徴的なのが、企業文化を一番に持ってきていることです。ちなみに、企業の経営は「企業文化で3分の1が決まる」と言っています。

企業文化対する考え方をジェームズ・ワット氏の著書『ビジネス・フォー・パンクス』より一部引用します↓

企業文化は組織をつくる基本素材であり、組織のあらゆる行動の原動力となり、指針となるものだ。企業文化をあるべき姿にすることが、リーダーの仕事の大部分であるといえる。

 

企業文化とは集団としての価値基準と共通認識のことだ。社員が何を考え、感じ、実行するかを決める。また、DNAのように企業の姿を決め、善悪を判断する指針にもなる。

 

(中略)

 

企業文化を維持し、育てることなしに成功はありえない。

企業文化を重要視していることが、よく伝わってきますね。「ブリュードッグ」では、企業文化に合わないと思われる方は、採用しませんし、採用した後に、企業文化に合わないと判断された方はすぐに解雇するという徹底ぶりです。

トップが、どんなに最高のビールへのこだわりを持っていても社員が、同じようなこだわりを持っていなければ、ブリュードックの使命である「俺たちと同じくらい皆をクラフトビールの虜にする」ことの実現は難しいと考えているのでしょう。だからこそ、ブリュードッグはここまで企業文化を重要視しているわけです。

企業の戦略の話をする時に、企業文化の重要性について触れるとあまりピンとこない方が多いですが、実は企業戦略と企業文化は密接な関わりがあります。実は、戦略的にみてもユニークな企業文化に支えれた強みを持っている会社は継続的に競合優位を築けています。

例えば、ビジネスホテルのドーミーイン(「世界5位の実力。ビジネスホテル「ドーミーイン」は何が違うのか?」)は、「一人ひとりへの気配りの文化」に支えられた「快適さ」や「美味しい朝食」という強みで競争優位を実現していますし、メガネメーカーのフォーナインズ(「1本7万円から! 人気の眼鏡「フォーナインズ」が安売りしない理由」)は、最高の着け心地を実現することを追求する企業文化に支えられた「掛けていて心地よい」という強みで差別化しています。

その他にも、企業文化が強みを支えている企業はたくさんありますので、意識して観察してみるとおもしろいと思います。

今後、企業文化に支えられた「ブリュードック」の躍進がどこまで続くのか注目していきたいです。

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