安倍首相の自己都合解散が生んだ立憲民主という政権交代の受け皿

takano20171024
 

蓋を開ければ自民党の圧勝に終わった衆院総選挙。公約にも掲げた安倍首相の悲願でもある憲法改正にまた一歩近づいたと見る向きもあるようですが、「むしろ遠のいた」とするのはメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』の著者でジャーナリストの高野孟さん。今回の記事中で高野さんは、安倍首相に改憲に必要な国民投票に打って出る力はないとの見方を示すとともに、そもそも今回の総選挙は迷惑千万で無駄なものだったと一刀両断、さらに今後の政界の流れについても分析・予測しています。

やらなくてもよかった無駄な総選挙の無残な結果──立憲民主党の誕生と躍進で「対抗軸」が出来たのが成果

改めて言うまでもないが、国民から見ればやらなくてもよい、何を選択すればいいのかも不明なまま投票所へ足を運ばなければならない、迷惑千万な総選挙だった。それで終わってみれば、自公合わせてほぼ改選前と同じ3分の2超確保で安倍首相続投という、骨折り損のくたびれ儲けのような空しい結果である。

とはいえ、モリ・カケ疑惑で失墜寸前だった「安倍一強」がこれで蘇ったのかと言えばそうではなく、むしろ、政権が下り坂で何かが起きればたちまち転げ落ちかねないという傾向は深まったのではないか。

モリ・カケ疑惑隠しは成功しない

とにかく安倍首相の言うことなすことすべてが、ますます支離滅裂になってきた。

今年の通常国会後半はモリ・カケ疑惑が焦点となり、前川旋風で追い込まれると6月18日、早々に閉会して、以後、口では「国民に丁寧に説明する」と言いながら、野党からの臨時国会開会要求を拒み続け、それへの非難が高まると、「ええい、面倒だ、解散だ」とばかり、全くの自己都合による解散のためだけの臨時国会を召集し、冒頭解散。総選挙を挟んで11月1日に特別国会を召集して首班指名を受け組閣(といってもたぶん全閣僚留任)をしなければならないが、恐らく実質審議はしないまま11月4~6日のトランプ来日、10~11日のAPEC首脳会議、14日の東アジアサミットなどの外交日程に逃げ込んで、年内には臨時国会を開かない方針と言われる。ということは、今年の6月中旬以降、来年1月中下旬の通常国会開会までの何と7カ月間も、国会は審議機能を停止したままになるのである。首相が自分と妻の不祥事を隠すために国会を長期閉鎖するという、前代未聞の事態である。

それほどまでに安倍首相はモリ・カケについて「国民に丁寧に説明する」のがイヤなのであり、しかも、そうやって国会が仮死状態にある中で加計学園への認可をこっそりと下ろして来年4月の開学に間に合わせようという魂胆なのだろう。しかし、こんなことをしても国民も野党も忘れるわけがなく、来年の通常国会は冒頭からこれをめぐって大荒れとなることは避けられない。

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