家電の悪夢再び。中国の自動車産業が、日本を時代遅れにする日

伏木悦郎 中国車 日本車
 

10月28日から一般公開が始まり、盛り上がりを見せている「東京モーターショー2017」。世界の自動車大国といえば、ドイツやアメリカ、そして日本を思い浮かべる人も多いと思いますが、メルマガ『クルマの心』の著者で日本のクルマ産業を知り尽した自動車ジャーナリスト・伏木悦郎さんによると、中国の高速道路や自動車産業はここ数年で驚異の進化を遂げていることを紹介。近い将来、日本車を脅かす存在になりうる可能性を指摘しています。

日本の40年を10年で駆け抜けた中国

中国は、外国人旅行者の自動車による自由往来を許していない。ジュネーブ条約に加盟していないので国際免許も無効。6ヶ月以上の就業ビザを持たないと中国各地で運転できる免許を取得できないルールとなっている。

たとえば上海には日本語で受験できる仕組みがあって、在留資格の持主が日本の本免許の中国語への翻訳を申請して筆記試験をパスすれば行政区分内での運転が可能となっている。

外国人向けのレンタカーは存在するが、よほど中国語に堪能であるとか中国社会に明るいという人でないかぎりは自ら運転することはリスクと考えた方が良いようだ。運転手付きのレンタカーもあるが、短い時間ならタクシーのほうが合理的と考えられている。

中国が欧米諸国並みに自由に自動車で旅する日は訪れるだろうか。国の体制がまったく異なるので皆目わからない。

多少腕に覚えのある私でも、上海や北京の市街地の光景を見ると遠慮したくなる。

これまで中国本土での運転経験はわずかだ。

上海万博の2010年にGMシボレーのPHEVボルトをクローズドされたリゾート敷地内で走らせた。それ以外では長城汽車の保定市郊外の除水プルービンググラウンド(PG)内と、保定市内のHAVAL(長城汽車のSUVブランド)ディーラーの試乗車を当地の各社ディーラーがテストコースに充てた街区の直線路で撮影のために走らせただけ。

上海市内の交差点のカオス状況を見れば走ろうという気は失せるし北京のラッシュアワーに繰り出す勇気はなかなか湧かない。バンコクの激混みも経験しているが、親日のタイとは真逆の土地柄。ネイティブ並みの語学力なしでは歯が立たない。ここでは言葉をカバーするコミュニケーションツールとは言い切れない。

2004年のF1中国GPで見た上海は噂に違わぬ高層ビルの林立に目を見張ったが、その3年後の上海国際自動車ショー会場のある浦東新区界隈の日進月歩の変貌ぶりにはまさに度肝を抜かれた。

2008年の北京五輪から2010年の上海万博に掛けての変化はまさにドッグイヤーのスピード感。今年の上海ショーは怪我のために断念したが、去年までの足掛け10年のオートチャイナ通いは中国経済のダイナミズムを肌で感じる強烈な印象として身体に刻まれている。

訪れる度に街の姿に変化が見られ、突貫工事の高架高速道路がみるみる完成する。

地下鉄延伸のスピードはインフラ/システムの最先端ぶりと合わせて驚きの連続。北京の地下鉄は瞬く間に東京の総延長に迫り、モーターショー会場へのアクセスは回を追うごとに容易になって行った。

昨年(2016年)の北京ショー後の7月に招かれて訪れた長城汽車は衝撃的だった。

そもそもは、2005年のレクサスISの開発責任者だった福里健(すぐや)チーフエンジニア=CEとの出会いに始まる。

福里元CEとは2010年頃から世界各地のモーターショーで会う機会があった。当初はジョンソンコントロールというアメリカのサプライヤーに転出したということで「何かの時にはよろしく」と挨拶されていた。

それが4年ほど前にまたショーフロアでバッタリ会うと「今はここです」と長城汽車の副総裁という肩書の名刺を差し出された。何度目かの遭遇の折りに「機会があったら取材させてください」と言ったことが現実となったわけだが、初めて知る中国の民間私有自動車メーカーは驚きに満ちていた

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