議員やマスコミを総動員しなければ設置すらされない第三者委員会

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9年前に起きた中学生の自殺事件の原因が「いじめ」であったことが、今年になってようやく判明したという驚くべきニュースが飛びこんできました。無料メルマガ『いじめから子供を守ろう!ネットワーク』ではこのニュースを詳しく掘り下げながら、第三者委員会の設置やその後に起こる数多くの問題を指摘するとともに、改善すべき点を挙げています。

頑張れ 第三者委員会

10月は選挙報道や台風のニュースなどが連日報道されていましたが、そんな中、いじめに関して、驚くべきニュースがありました。

中学生の自殺について、9年たってようやく、「いじめが原因だったとの証言が得られた、というのです。記事によると、この事件は、2008年9月、千葉県館山市で起きました。当時、中学2年の男子生徒が家で自殺しました。今年7月、いじめとの関係を調べている同市の第三者委員会が、亡くなった子供の同級生とその保護者に対して、計250通もの協力依頼文を出しました。すると、中学時代の同級生が、男子生徒が中学で「いじめ」に遭っていたことを裏付ける証言をしたというのです(2017年10月14日付毎日新聞)。

250通の協力依頼文を出すという第三者委員会の努力が新たな証人の発見につながりました。すばらしいニュースです。しかし、「2008年の事件をなぜ今頃になって」という疑問も当然、わいてくるのです。

2008年、男子生徒の死亡直後、学校は、中1、中2生徒にアンケートを実施しましたが、市教委は、「からかいなどいじめにつながる事実はあったが、死に直接結びつく要因は分からなかった」と結論づけました。その4年後、2012年の夏、前年に起きた大津市のいじめ自殺事件が大きく報道されました。男子生徒の父親は、

「他の家族への影響を考えて黙っていたが、大津市の事例もあり、息子の死を無駄にしたくない」
「母が外国人で小学時代からいじめを受け、別の学区の中学に進んでもいじめは続いていた」

として4回目の命日を前に再調査を求めることにしました。しかし、生徒らへのアンケート用紙550枚は、校長によってすでに処分されていました。2012年10月、市教委は、再度、当時の中学在校生、小学6年時の同級生等に対して、アンケートを実施。しかし、同年12月、「自殺に結びつく要因と考えられる事実は確認できなかった」と結論づけました。

2014年8月、男子生徒の父親は市長と面談し、市長は市長部局として第三者委員会を設置することを9月に表明しました。ただ、その後、委員の人選について市側と遺族側が対立。協議が整わず、2015年9月、「調査を始めてもらうことを優先する」として遺族側が全面的に譲歩し、委員を各団体から推薦してもらうという形で人選が進められました。それでも、実際に第三者委員会が開催されたのは、2016年3月になってからでした。

その後、今年(2017年)9月までに18回の会議が開催され、調査対象を広げようと、第三者委員会は、今年の4月と7月、関係者に協力依頼文書を送付しました。それが今回の新証人の発見につながったようです。第三者委員会は非常に頑張ったと言えますが、以上の経緯をご覧いただいて分かるように、あまりにも遅すぎます

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