EVは期待はずれ。東京モーターショーで中島聡が感じた本音

 

期待していた EV シフトに関して言えば、全体的に期待はずれでした。EV に大きく舵を切ったはずのドイツのメーカーも、まだまだ EV へのロードマップを目に見える形でプレゼンする準備が出来ていませんでした。日本のメーカーも、日産を除いては EV はコンセプトモデル程度しか見せるものがなく、EVシフトが加速する世界で、テスラや中国メーカーにどう対抗するかの戦略は見えて来ませんでした。

唯一の例外は日産で、e-powerzero-emissionという二段構えは、とても現実的で説得力のある戦略に私には思えました。e-power はハイブリッドの一種ですが、プリウスなどのハイブリッドと違い、エンジンは発電だけのためにあり、駆動には関わっていません。

日産は、e-power をあえてハイブリッドとは呼ばずに、「発電機付きの電気自動車」としてマーケティングすることにより、既存のメーカーの中で「EVシフト」の先端を走っていることをアピールしつつ、「電気自動車は欲しいけれども航続距離が短いのは困る」と考えている層に売り込もうという戦略をとっているのです。

フランスやドイツが内燃機関自動車を排除しようとした時に、e-power車がどんな扱いを受けるかは不明ですが、プリウス型のハイブリッドよりは有利なことは事実です。

私が日産の経営者であれば、まずは販売する車両すべてを1日でも早く e-power化し、電池価格の下降に伴ってzero-emissionの比率を上げていく、という戦略で、テスラに対抗すると思います。東京モーターショーの日産のブースを見る限り、日産の経営者はそれに近いことをすでに考えているように私には思えました。

image by: Kobby Dagan / Shutterstock.com

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マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。IT業界から日本の原発問題まで、感情論を排した冷静な筆致で綴られるメルマガは必読。

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