とはいえ、台湾に対する中国の武力行使は、経済的犠牲も大きく、また、万が一、成功しなければ、共産党・国家指導者の存亡にかかわってきます。ですから、あまりカネのかからない、外交による台湾への「三光作戦」(何も与えないようにする)を展開し、ほとんどすべての台湾の外交活動を妨害しているわけです。
そしてそのいちばんの使いっ走りが、事大主義の韓国です。韓国人大学生までが中国政府の意を受けて、学生の国際会議から台湾の大学生代表を排除しようと徹底的な嫌がらせをすることもよくあります。見かねた欧米代表が「もうこのへんでいいでしょう、やめてくれないか」とうんざりすることもしばしばです。
もちろん韓国のみならず、日本の野党や外務省も、李登輝元総統の来日を妨害するなど、これまで中国政府の手先になることも少なくありませんでした。
中国の対台湾「三光作戦」には、台湾から友邦を引き離すというやり口もあります。たとえば2016年には中国の圧力で西アフリカのサントメ・プリンシペが、2017年にはパナマが台湾と断交しました。
冒頭の話に戻りますが、世界保健機構(WHO)でも、台湾は2009年からオブザーバーとして総会に参加してきましたが、今年は中国の圧力で招待状が届きませんでした。グローバル化でパンデミックのリスクが世界的に高まっているにもかかわらず、です。
その他、蔡英文政権の誕生後、中国は国連食糧農業機関(FAO)の水産委員会(昨年7月)、国際民間航空機関(ICAO)総会(同9月)などでも、台湾の参加を阻んできました。いずれも国連の専門機関で、世界の諸問題を議論する場です。産経新聞によれば、中国の当局者は「出席できない責任は民進党当局にある」と語っているそうです。
習近平が「祖国統一」を歴史的任務だと宣言している以上、これまで以上に台湾に対する圧力を強めてくることは間違いありません。だから人類的な問題を議論する国際機関ですら、台湾を排除しようとするのです。しかしそれは、中国の政治的主張を世界に押し付けているだけのきわめて品のない身勝手な論理です。
中国にとっての「三大の敵」とは、アメリカ帝国主義、日本軍国主義、台湾分裂主義のことですが、分裂主義である台湾に対して中国は「国家分裂法」までわざわざつくって、アメリカの国内法である「台湾関係法」に対抗しています。
中国が台湾に仕掛けてくる圧力として、私が心配していることが2つあります。1つは、習近平が第19回党大会で権力を牛耳ったことにより、台湾に対して「92共識」、つまり「統一」についてイエスかノーかを期限付きで回答を迫るということです。もう1つは、トランプ大統領との駆け引きで、北朝鮮問題の解決と引き換えに、アメリカが台湾への武器提供や関与を止めるという取引が行われることです。
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