何を今さら。内定辞退率が過去最高64.6%で焦り始めた日本企業

 

思い起こせば2年前、連日メディアは“オワハラ”に関する報道を繰り返しました。

オワハラ=就活終われハラスメントは、企業が内々定を出した学生に対し、以降の就職活動を終えるよう働きかけたり、

  • 内定辞退したら、採用にかかった費用1000万円を請求すると脅された
  • 就活を続けていると明かした途端、約2時間電話口で説教され結局内々定を取り消された
  • 内定の条件として誓約書へのサインを求められた
  • 頻繁に会社の関係者や内定者を交えた食事会や会社のイベントに参加させられ、辞退しにくい関係作りをされる

……といった行為が報じられ、私自身が学生から直接聞いたものでは、

  • 内定先から親にお中元が届いた
  • 頻繁に内定先から、メールや電話があった
  • 親の意思確認を求められた

などがありました。

社会問題になったことで文科省が調査を実施。

その結果、68.3%の大学・短期大学がオワハラに関する相談を受けた」と回答。

一方、「ハラスメントをされた」という学生は5.8%

大学側の回答との齟齬が気になりますが、こちらに詳しくは出ていますのでご興味のある方はどうぞご覧下さい。

いずれにせよ、バブル期には合宿という名目で“監禁”されたり、ディズニーランドや高級レストランに連れて行かれたりして特別扱いされた“内定者”はいたし、就職氷河期が去り、内定バブルに湧いた2007年にも同じ様な囲い込みはあった。

だって、人事部が自分たちに課せられた数値目標を達成するには、しかたがありません。

内定辞退者が相次げば「なんでこんなに少ないんだ?」と言われ、「なんでこんなすぐにやめるのばかり採った」だの「もっと優秀な学生を確保しろ!」だの、上は言いたい放題です。

いつの時代も、人事の人は上司から「無能扱い」されないように、“優秀な人材を競合他社に奪われないようにするための策として、オワハラを実行したのです。

私は2007年の内定バブル期に、新卒採用の人事部のヒアリング調査をしたのですが、その頃もっぱら行われていたのが、“白い嘘による人集めでした。

白い嘘とは、大切なことを故意に語らない態度のこと。企業は伝えるべき大切な厳しい内容にあえて触れずいいことばかりを並び立て人材確保に精を出していました。

「いいことしか聞いてないと、せっかく入社してもすぐに辞めちゃうリスクはあるんですけど…」と懸念する声もありましたが、「母数が多けりゃなんとかなる、競合他社に採られるよりマシ」ーー、こう彼らは目先の“幸せ”にすがりついた。

もし、2007年の時点で「内定辞退者を減らす工夫」をとことん考えれば、オワハラが問題になることも、「内定者過去最高の6割」なんてこともおきなかった。

ところが、“運良く”リーマンショックで売り手から買い手市場に転じ、内定式前夜に「空席があったらどうしよう」とドキドキすることも、「就活を終わらせることを条件に内定を出す」と学生を脅す必要もなくなりせっかくの思考するチャンスを放棄したのです。

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