しかし立憲民主党が残った
安倍首相や伊藤氏や前原氏にとって最大の誤算は、立憲民主党がヒョッコリ出現して、何といきなり野党第一党に躍り出たことにより、「統一戦線」の再構築の可能性が残ってしまったことである。しかも、民進党の癌であった前原氏はじめ細野豪志氏、長島昭久氏、松原仁氏らゴリゴリの反共派や親米派はこぞって希望へ走って、立憲民主党は今までより遥かにスッキリしたリベラル政党として生まれ変わることができたので、野党協力は構築しやすくなった。
もちろんそれは簡単なことではなく、枝野幸男代表ご本人にしてからが、一般論として野党協力の有効性を十分に認識してそれを推進していく立場にはあるものの、自分の後援会の中心には共産党嫌いの保守派がいて、「共産党と選挙協力をするところまでは目をつぶるが、お前がさいたま駅前で志位委員長と並んで選挙演説をするのは許さない」とまで通告されているとボヤいているのを、聞いたことがある。
しかし、実はこの総選挙でも共闘効果は現れていて、典型例は高知2区。自民党の山本有二=前農相に対し、元民進党参院議員の広田一氏や共産党候補が挑む形だったが、共産が候補を下ろして広田氏に一本化した。前回結果に基づく基礎票は、
- 自民30.66+公明16.09 =46.75%
- 立民17.29+共産13.44+社民1.88=32.61%
で、事前の予測は当然、「自民優位」だった。が、蓋を開ければ
- 広田:9万2179票(56.48%)
- 山本:7万1029票(43.52%)
で、野党統一候補の大勝。山本氏は辛うじて比例で復活した。
こういう結果となった要因の第1は、共産党の協力の徹底ぶりで、同党支持者の何と! 100%が広田氏に投票し(朝日出口調査)、また広田陣営のビラ11万枚のうち10万枚を共産党が配った(赤旗報道)。
第2に、立民支持者の94%、希望支持者の81%、無党派層の69%が広田氏に投じた。面白いことに、希望の候補者が出ていないとその支持者はほとんどためらいもなく立民に投票するらしい。立民は無党派層にとってまるで抵抗がない。
第3に、最も注目すべきは、自民支持層の24%、公明支持層の30%が広田氏に投じたことである。この朝日出口調査の数字は、与党にとってはかなり衝撃的なもので、自民・公明支持層の4分の1ないし3分の1近くが立民に投票する具体的な理由までは分かっていないが、安倍首相のモリカケ疑惑への不誠実な対応とか性急な改憲論とかを嫌がっている人が多いと想像される。自民・公明に気に入らないことがあれば、我慢せずに立民に入れてしまうというそのビヘイビアがあることが、これからの1つの見所になる。
これに対して高知1区は、民進県連の副代表だった大石宗氏が希望から出て、もちろん野党協力には反対なので共産党も候補を立てた。相手は元から強い中谷元=元防衛相で、中谷氏8万1,675票(53.6%)、大石氏4万5,190票(29.7%)、共産2万5,542票(16.8%)と野党の大惨敗だった。
この高知1区と2区の結果に、分析すべき多くの問題点が含まれている。