【時事英語】日本の科学分野がやばい。科学雑誌「ネイチャー」が指摘

 

さらに課題は、そうしたコメントを学校の教育現場でも支持してきたことです。

テレビ等での海外の人の外交的なコメントの報道について、それを検証したり、考えたりすることを教育現場で奨励していないことにも大きな課題があります。

科学的な発想力の根源はといえば、「常識を疑う心」です。これが想像力を育み、人類の進歩をもたらします。引力の発見、地球が球体であることや太陽系の一員であることの認識など、すべてはそれ以前の常識にメスをいれることから、それらの発見がはじまりました。

日本の教育は、覚えること、暗記すること、さらに試験に合格するノウハウを磨くことという技術に特化し、先生のいうことに Why? という質問を投げかけること自体をタブーにしてきたのです。

ですから、報道されていること、教科書に書かれていることを丸のみにし、模範回答をする子供が優秀とされ、それに Why? と切り込み個性をみせる子供は異端とされてしまいがちです。

親も子供に学校の方針に合わせることが無難だという教育を行います。その結果、親と教師が一緒になって子供の能力を摘み取っているケースが数知れずあるはずです。

日本を海外の人にどのように紹介するかというテーマを与えたとき、正に模範解答のようにここで紹介した内容のコメントで埋め尽くされた事実は、この Why? という能力を磨くことを怠っている教育現場が生み出した負の遺産なのです。

批判する目を養う意識が欠如しながら、報道や国のいうこと、あるいは権威があるといわれる人のいうことを鵜呑みにして、判で押したような回答をする子供が増えているのです。

その結果、海外の人と柔軟にコミュニケーションのできない人材が日本を埋め尽くすことになりかねません。

政治上、あるいは国際関係の上では一応うまくいっているようにみえても、実際は精神的に世界から孤立した人が増え続けるのではという危惧を抱くのです。

よく、日本人は自らの国を島国で、だからこそユニークだといいます。世界に島国は数え切れないほどあり、それぞれがユニークな文化を持っているにもかかわらず、日本人は自分のことを特殊あつかいしがちです。その意識が歪んだ優越感へと退化した結果、こうした判で押したような日本礼賛のコメントがでてくるのです。

こうしてみると、ネイチャーの記事が指摘する、日本人による優秀な論文や科学的発表の機会の減少は、単に英語力だけの問題ではないことがわかります。英語力は大切ですが、英語を使いどのように人とコミュニケーションをし、 Why? という疑問をぶつけ合いながら切磋琢磨できるのかという点こそが大切なのです。これは日本の教育現場全体に投げかけられる課題なのです。

英語教育の改革の現場で、4技能の育成がとやかくいわれています。しかし、ここに指摘した課題を踏まえずに改革を実施した場合、それは新たな「受験技術」を磨くための教育がはじまったに過ぎないことになります。

英語教育をどのように変えてゆくかを見据えることと、Natureの指摘する危惧をどのように克服するかというテーマとは同次元の深刻な課題なのです。今、日本では教育者自身の意識改革こそが問われているのです。

 

image by: shutterstock

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