これに対してですが、東海道新幹線を運行している東海旅客鉄道(JR東海)は、比較的早期に新幹線車両への影響を開示した上で、対策を発表しています。最初の不祥事発覚が10月8日で、JR東海は9日の時点で「該当製品が新幹線車両に使用されている」と発表しています。また詳細なプレスリリースは19日ですから、極めて早いと言って良いでしょう。
その対応ですが、具体的には以下のような内容です。
- 9月21日の時点で神戸製鋼および、車両製造メーカーである日立製作所と日本車輌製造から「新幹線に使用している部品の一部に不適合製品がある」との報告を受けた。
- これに基づいて調査を実施したところ、「台車の軸箱体」「事務箱の前ブタ」「軸ばね座」「セミアクティブダンパ受け」「車体間ロールダンパ受け」に神戸製鋼製のJIS不適合品が使用されていたことが判明。
- 各部品の実際の強度データを確認したところ、「極めて高い強度」を有しており、安全上の問題はない。
- 新幹線車両については、定期検修の際に適合する部品に交換する。
- その費用に関しては、神戸製鋼に請求する。
というものです。そのデータ自体は、企業ノウハウになる部分であると思われ、開示はされていませんが、結論とすれば要するに次のようなことです。
「安全に問題がないことが確認された以上は、即時補修はしない」
「だが、スペック不足は明らかなので検修のタイミングで部品交換する」
「そのコストは神戸製鋼に請求する」
ということです。企業としてシンプルではあるが、毅然とした姿勢を示したと言えます。こうした姿勢を示した背景には、新幹線の車両を充分に余裕のあるスペックで作ってきたという経営姿勢への自信もあると思いますし、「安全より安心」だという消費者の感情論に乗ってパニックを起こすことへの警鐘も入っていると思います。
このパニックという問題について言えば、消費者が起こすだけでなく最近は、何であっても異常が報道されたら「全商品は回収して廃棄」というような「供給側の投げやりなパニック対応」というのも多いわけです。「どうせ、消費者は客観的な安全では満足しないのだから、コストを払って心理的な安心を確保する方向性しかチョイスはできない」というわけで、昨今の危機管理コンサルの類いは、そのような「事なかれ式」とも「投げやり」とも言える「パニック対応」を推奨してしまうことが多いわけです。