ただし、なんでも後先考えずに行動し、その結果、表面的な改革、革命で終わってしまうのが中国です。これまでも緑化が叫ばれれば、禿山を緑のペンキで染めるといった、「短絡的」と呼ぶのもおこがましい間違った方法がさかんに行われてきました。それでも現地政府担当者が「もっとも先進的な緑化方法」だと胸をはる始末です。
● 最先端トンデモ緑化技術再び=ペンキ一塗りではげ山があっという間に緑の山に―中国
習近平の「トイレ革命」にしても、施設だけは豪華で清潔なものを設置するかもしれません。実際、豪華な内装の「5つ星級」のトイレや、テレビ、ATMまで完備しているトイレが登場しているようです。
● 先進的すぎる中国の公衆トイレ『第5空間』がトイレ界の常識に革命を起こしそう
さすがに中国の市民からも「金の使い方が間違っていないか」という疑問が呈されているようですが、しかし問題は、その先の下水処理まできちんとやっているのか、ということです。どう考えても、それらがなされているとは思えません。ただでさえ、中国の河川の汚染は深刻で、汚水にまみれています。
中国環境保護部の2016年の報告では、国全体の3分の2の地下水、3分の1の地上水が肥料や重金属による汚染で「人が触れない」状況にあるといいます。また、寧夏回族自治区では、毎日6,400トンの生活排水が処理されないまま川に流されているといいます。
● 中国で河川、湖、地下水の汚染が深刻、「人が触れられない」状況も―英メディア
淮河、黄河、北京や天津、河北省を流れる川の下流域では70%以上が汚染されているとされ、また、2015年に中国水利部が調査したところでは、中国各地の地下水の80%以上が飲用に適さないと報告されています。しかも、中国の淡水資源は世界の7%を占めるものの、水資源の分布が偏っているため、国内の都市の3分の2が水不足に陥っているとされています。
● 中国の水質汚染が深刻化、背景に「2つの重圧」―シンガポール華字紙
「トイレ革命」は結構ですが、表面的な成果ばかりを追求した結果、ただでさえ少ない水資源がトイレの水洗に使われ、それが浄化されずに河川、さらには海に垂れ流しになる可能性が高いのです。
冒頭の記事にもあるように、かつて毛沢東は大躍進政策において、ハエ、蚊、ネズミ、スズメを「四害」として、徹底的な駆除を進める大衆運動「除四害運動」を展開しました。とくにスズメは農作物を食い荒らす害獣として目の敵にされ、徹底的な撲滅対象にされたのです。
しかしその結果、かえってハエや蚊、さらにはイナゴなどの害虫の大発生を招いてしまい、農業は大打撃を受けました。中国全土からスズメがいなくなってしまったため、ソ連から大量輸入したともいわれています。
よく考えればわかりそうなものですが、独裁者の鶴の一声で妄信的に突き進んだことで、かえって悪い結果を招いてしまったという一例です。