年金のプロが解説、知らないと損する「遺族年金」受給の特例

 

1.昭和29年6月5日生まれの夫(今は63歳)

何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法!(参考記事)

昭和37年12月生まれの55歳の妻有り(8年前に今の夫と再婚)。平成13年2月生まれの現在16歳の子有り(前夫との間の子で現夫とは養子縁組している)。同居。

さて、この夫が20歳になる昭和49(1974)年6月から平成2(1990)年6月までの193ヶ月間は国民年金保険料全額免除。平成2年7月から60歳到達月の前月である平成26年5月までの287ヶ月間は未納にしてきてしまった。60歳までは国民年金に強制加入で国民年金保険料納付義務がありますが、60歳到達月以降は国民年金には加入しなくてよくなる(保険料納付義務がなくなる)。60歳以降というのは年金に加入する必要がない期間。

で、63歳になって人生初めて厚生年金に加入した(平成29年6月から)。厚生年金は最大70歳まで加入可能。給与(標準報酬月額)は月額30万円とします。賞与は無しだった。

しかし、平成29年12月31日に厚生年金加入中に死亡してしまった。遺族である55歳の妻や子に遺族年金は貰えるのか?

遺族年金を貰う条件である年金保険料納付期間+免除期間+カラ期間≧25年(300ヶ月)を見てみると、全額免除期間が193ヶ月と厚生年金加入期間7ヶ月(平成29年6月から平成29年12月まで)を合わせて200ヶ月しかないから無理

じゃあ、保険料納付要件である「死亡日の属する月の前々月までの保険料を納めなければならない期間」がある場合は、その3分の1を超える未納はない事が必要ですが、どう見ても無理(笑)。

死亡日の前々月までを見てみると、保険料を納めなければならない期間は20歳から60歳までの480ヶ月と厚生年金5ヶ月(平成29年6月から平成29年10月まで)の内、未納期間が287ヶ月もありますよね。287ヶ月÷485ヶ月=59.1%もの未納割合

しかし、保険料納付要件の特例がある。死亡日の属する月の前々月までの直近1年間に未納が無い事(65歳未満の人に限る)。つまり、「平成28年11月から平成29年10月」までの間に未納がなければ遺族年金が貰える

この夫は平成29年6月から平成29年10月までは厚生年金加入だけど、60歳をすでに超えていた平成28年11月から平成29年5月までの期間は年金に加入する必要が無かった期間。平成28年11月から平成29年5月までの7ヶ月は未納とみなされるのか?

この期間は未納扱いとはなりません。よって、直近1年以内に未納がないものとして特例を満たす。だから、妻に遺族厚生年金が支給される。

※参考

どうして年金保険料の未納は避けろ! ってうるさく言われるのか?(保険料納付要件参考記事)

いくらになるのか。

平成29年12月31日に死亡してるから、この12月31日が遺族厚生年金の受給権発生日になり、遺族厚生年金は請求により翌月1月分からの発生になります(請求が遅れても支給は最大5年遡る)。なお、厚生年金の資格を失くす(喪失)のは翌日の1月1日だから平成29年6月から平成29年12月までの7ヶ月で計算する。

計算はザックリですが算出してみます。この7ヶ月の給与平均(平均標準報酬額)を30万円とします。

・(30万円÷1,000×5.481×7ヶ月)÷7ヶ月×300ヶ月×3÷4=369,968円月額30,830円

なんで7ヶ月が300ヶ月になってるかというと厚生年金加入期間中の死亡は300ヶ月最低保障(300ヶ月みなし)があるから。更にこの死亡時点で、配偶者である妻に18歳年度末未満の子が居るから定額の遺族基礎年金779,300円と子の加算金224,300円も妻に支給。

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