業界3位に転落したマツキヨがなぜ、過去最高益を出せたのか?

 

このように業績の低迷が続いていたわけですが、ただ手をこまねいていたわけではありません。「骨太の企業体質にするために体質改善を優先した」(広報)と言うように、むやみやたらに規模を拡大するのではなく、1店1店の稼ぐ力を高めたり不採算店舗を整理するなどで採算性を高めるようにしていたのです。16年度は97店を新規オープンした一方、87店を戦略的に閉鎖しています。

訪日客の取り込みにも注力していました。訪日客がよく訪れる東京の新宿や銀座、札幌、博多といった都市部を中心に店舗を展開してきたことが追い風となり、17年4~9月期には免税対応店舗が16年度末から29店純増し409店にまで拡大しています。その結果、同期の訪日客向け売上高の構成比は16年度の「9%強から11%台に拡大」(『激流』/18年1月号)しました。

9月には訪日客の玄関口となる成田空港からバスで約5分のところにある「成田東武ホテルエアポート」にマツモトキヨシをオープンしています。同ホテルの宿泊客の約7割が外国人のため、需要が高い医薬品や化粧品を中心に品ぞろえした上で訪日客の旅行やビジネスをサポートしています。

こうしてマツキヨは訪日客の取り込みに注力してきたわけですが、ところで、マツキヨにおける訪日客の実態はどのようなものなのでしょうか。雑誌『マテリアルフロー』(17年7月号)に掲載されたマツモトキヨシホールディングスの成田一夫副社長の発言を引用します。

当社の場合、国別のインバウンド売上高では、中国が68%、台湾が16%と2か国で84%を占め、顧客数では中国が56%、台湾が21%で合わせて77%になる。中国の方の購入品の上位10品目を見ると、国の規制で買えない医薬品があるからだろう、ほとんどが化粧品だった。一方台湾には規制がないので医薬品が主な購入品である。

このことからわかるとおり、マツキヨの訪日客向け売上高は大半が中国と台湾の観光客によるものです。また、化粧品と医薬品の購入が多いとのことですが、これは同社の小売事業全体の売れ行き傾向とも合致しています。同社の16年度の化粧品売上高の構成比は39%と商品カテゴリーの中で一番高く、次いで医薬品が32%と続き、この2つの商品カテゴリーだけで売り上げの約7割を占めています。

食品を強化しているドラッグストアが多いなか、マツキヨは食品ではなく化粧品・医薬品を中心に据えるという他ではあまり見られない独自路線を歩むことで差別化を図ってきました。このことが功を奏し、訪日客の取り込みでも成功しているのです。

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