ドン・キホーテが訪日客の取り込みに力を入れだしたのは1998年です。この年に新宿店が初めて免税販売の免許を取得しました。さらに本格化していったのが2008年で、多くの中国人が利用する「銀聯(ぎんれん)カード」での決済を同年6月に導入しました。そして同年7月に専門の部署を立ち上げ、市場調査やプロモーションを積極的に行っていったのです。
プロモーションで大きな役割を果たしたものに「ようこそ! マップ」があります。地域企業・施設などと連携してつくった訪日客向けの無料の案内地図で、ドン・キホーテだけでなく地域の観光スポットや宿泊施設、飲食店などの情報も多言語で表記しています。
ドン・キホーテだけでなく「街ごと売り込む」ことでその街を訪れる訪日客のパイを大きく増やし、その一部をドン・キホーテで取り込むという狙いが「ようこそ! マップ」にはあります。単にドン・キホーテだけを宣伝するよりも結果としてより集客できるという考えがあるのです。
ドン・キホーテの一部の商品を割引価格で買えるなどの特典が付いた「ようこそ! カード」も大きな役割を果たしました。提携する旅行会社や宿泊施設を通じて配布し、訪日客の取り込みに成功したのです。また、カードから顧客情報や購買データを収集し、マーケティングに活用することもできるようになりました。
訪日客の取り込みで大きな注目を集めたのが、2014年に約2カ月間行われた「新宿ショッピング・キャンペーン」です。ドン・キホーテや三越伊勢丹、ルミネ、ビックカメラなど新宿に店を構える企業などが共同で販売促進施策を実施しました。店舗情報や地域の地図、特典などを掲載した冊子を旅行代理店や宿泊施設を通じて配布しました。
「新宿ショッピング・キャンペーン」も「ようこそ! マップ」と考え方は同じで、地域全体の魅力を訴求することでまずその地域に来てもらい、その後にドン・キホーテに来店してもらうという狙いがあります。
昨年10月には、「マジカプレミアムグローバル」を導入しました。訪日客が住む各国に商品を配送するサービスで、訪日客は日本滞在中だけでなく帰国後も商品を購入できるようになったのです。
こういった施策のほか、外国語表記のPOPの充実、外貨決済ができる環境の整備、免税カウンターの設置、外国語が話せる店員の増強といった施策を行い、訪日客が買い物しやすい環境づくりも並行して実施していきました。
こうした取り組みに加え、夜遅くまで営業していることも人気の理由となっています。日本での観光産業は緒に就いてきましたが、夜間の観光産業はまだ遅れていて、夕食を終えた後に時間を持て余す訪日客が少なくないなか、深夜営業のドン・キホーテが受け皿となっているのです。ドン・キホーテの時間帯別の免税売上高を見てみると、午後10時から12時がピークになっています。
こうした訪日客向けの様々な施策を早くから愚直に実行してきたことが実を結んでいます。訪日客の数は今後さらに増えることが見込まれているため、ドン・キホーテの免税売上高も当面増え続けていくことでしょう。さらなる業績の拡大が期待されます。
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