一度は倒産。職人技にこだわる野球用品メーカーが復活した理由

aoyama20171220
 

倒産した会社を社員が引き継ぎ、わずか数年で立て直す。そんな池井戸潤原作ドラマ顔負けの復活劇が、とあるスポーツ用品メーカーで実際に起こりました。今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』では著者でMBAホルダーの青山烈士さんが、メジャーリーガーからも愛される「野球の防具」を製造するベルガードファクトリージャパンの戦略・戦術を分析しています。

自社ブランドだからこそできること

メジャーリーガーが愛用している防具を製造している企業を分析します。

ベルガードファクトリージャパン(野球用品の製造・販売)

戦略ショートストーリー

防具にこだわる野球選手や審判の方をターゲットに「職人の技術力」に支えられた「個別カスタマイズ」や「軽さと耐久性を兼ね備えている」等の強みで差別化しています。

防具という得意分野に集中しつつ、ベルガード製品を愛用してくれている大リーガーを広告塔に活用し、注目を集めることで、防具ブランドとしての認知度を高めています。

■ 分析のポイント

自社ブランドだからこそできること

2012年に経営破綻したベルガード株式会社の商標を社員であった永井氏が引き継ぎ、立ち上げたのが「ベルガードファクトリージャパン株式会社」とのことです。

普通に考えて、倒産した会社の商標をそのまま引き継いでうまくいくようには思えないですよね。しかし、現在、ベルガードファクトリージャパンは増収増益を続けているようです。

その要因のひとつにあげられるのが、OEMの縮小です。OEMとは他社ブランドの製品を製造することを意味しますが、倒産したベルガードは、OEMを中心に事業展開してきたそうです。

通常、OEMを請け負う側には、商品の仕様を決める権限や生産量を決める権限、販売価格を決める権限はありません。つまり、OEMを事業の中心に置くことが何を意味しているかというと、発注先に依存してしまうことにつながることが懸念されるとともに、自社でコントロールできる範囲が狭くなるということです。

そして、自社でコントロールできる範囲が狭くなるということは商品や価格、売り方などがコントロールしにくくなりますので環境が変化した時などに、自社の打ち手が限られてしまうため、経営を難しくしてしまう場合があるのです。

勘違いしないでいただきたいのが、OEMが悪いわけではないということです。請け負う側にとっても、稼働率を高められるなどのメリットがありますので、経営上、有効な選択肢のひとつだと思います。実際にOEMを事業の中心にして成長を続けている企業もあります。例えば、国内の衣料品OEM最大手のマツオカコーポレーションはユニクロ向けのOEMで好調のようです。

要するに、生産する製品が今後も成長していくのかどうか、自社にとってOEMの占める比率がどのあたりが適性なのか、といったことを見極めながら自社に合ったバランスを取ることができるかということが重要ということです。

ベルガードの場合、倒産したことで、多くのOEM契約が打ち切られ、結果的にベルガードファクトリージャパンのOEM比率が下がりました。これにより、自社ブランドを育てざるを得ない状況になったと同時に、自社のコントロールできる範囲が広がりました。このことが浮上のきっかけになったと思われます。

いままでは、委託先の依頼にもとづいて商品を作っていたのが自分たちで試行錯誤しながら、良い商品を作っていくことが避けられなくなり、これが、顧客からの信頼につながり、野球の防具ブランドとして認知度が高まっていったと思われます。

自分たちで試行錯誤しながら良い商品を作るというのがポイントです。自分たちでPDCAを繰り返し回しながら良い商品を作っていくわけですが、これは自社ブランドだからこそできることです。OEMの場合は、同じようにはいきませんからね。

ベルガードファクトリージャパンは、自社のコントロールを取り戻す形で好循環に入ったように見受けられます。今後、日本発の野球用品ブランドとして、どのように世界に拡がっていくのか、注目してきたいです。

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