アメリカ人医師を対象にしたあるアンケート調査で、「おこなったケアの2割は実際には不必要だった」という驚きの結果が報告されたことをご存知でしょうか。今回のメルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』では、こうした「過剰医療ケア」がおこなわれている現状について、著者で現役医師の徳田先生が防御医療・患者の要求・医師の経済的インセンティブの視点で詳しく解説しています。
医療訴訟リスクを恐れて「防御医療」という実態
最近、アメリカ人医師を対象にある調査が行われました。「あなたは本当は不必要と思われるケアをどのくらいやりましたか?」という調査です。その結果、医師たちが行ったケアの2割は「実際には必要ではなかった」ということがわかりました。不必要な医療の割合は、オーダーされたすべての検査を合わせたものの四分の一、処方されたすべてのクスリのうちの五分の一、行われたすべての手技の10分の一でした。
その調査では不必要な検査を行った理由も尋ねており、米国の医師たちが挙げていた最大の理由は医療訴訟リスクの恐れによる「防御医療」で、これが85%でした。見逃しのリスクを恐れるがゆえに検査をやってしまった、ということが医師自身が振り返って感じた理由でした。
しかしながら、これまでの研究結果から、医師たちが思っていたほどより防御医療はコスト高にはなっていなかったことがわかっています。実際、訴訟リスクの低い地域で診療している医師たちの診療コストをみてみると、訴訟リスクの高い地域の医師たちの防御医療の程度と比べてほとんど変わっていませんでした。米国の最新データによると、防御医療による医療費の増大は総医療費のうちたったの3%未満でした。すなわち、医師たちは防御医療によるコストを過大評価していたのです。