中国がスペインを支持する理由は明らかです。中国のチベット、ウイグル独立運動、そして台湾独立を牽制するためです。実際、中国の台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室の馬暁光報道官は、11月15日、「スペイン北東部カタルーニャ自治州による独立に向けた取り組みが失敗したことは台湾の独立も失敗する運命にあることを示している」などと述べています。
● 中国当局者「カタルーニャ情勢、台湾の独立運動も失敗すること示す」
このように、中国側がスペインに肩入れする姿勢を見せてきたことにより、スペイン側も中国に配慮せざるを得なくなったのでしょう。ここでスペインが台湾人を台湾に送還すれば、中国から「分裂主義者」だと批判される可能性があります。
私はカタルーニャがスペインから独立することについては、あくまで当事者の問題であると考えますが、問題なのは、この問題を奇貨として利用しようとする中国の姿勢です。馬暁光報道官は「すべての国にとって国家の結束がもっとも重要」とも発言しています。
しかし、無理やり「一つの中国」にされるほうは、たまったものではありません。だからチベット、ウイグルでは独立運動が続いているのです。台湾では「ひまわり学生運動」が起こり、台湾人としてのアイデンティティ、「台湾人意識」が急速に高まっています。
華字新聞などのメディアでは、よく「五胡乱華」(五つの夷狄が中原に入って華人の後裔である漢族をホームグランドから追い出し、漢人は流民として四散したこと)にちなんで、チベット人、ウイグル人、モンゴル人、香港人、そして「台湾人」まで加えて「五独乱華」という造語で称しています。
しかし台湾では、国内の四独問題はあっても、台湾の独立までも「五独」に入れるのは不適切だと異議を唱える者が多いのです。いったい台湾はどこから独立するのか、という疑問です。
中国は2005年、アメリカの国内法を真似して「反国家分裂法」をつくりました。その狙いは、台湾を中国の「絶対不可分の一部」であることを無理やり宣伝するためです。
私はこれをある集会で「まだ結婚もしていないのに、離婚反対を先に明文化するようなもの」と説明したことがあります。先にウソを公然と口にして、「歴史的に中国のもの」と主張するというのは、このようなやり方は中国の常套手段なのです。
台湾では「白紙黒字」(書面としてはっきり示されていること)といって、ウソにだまされるなと注意喚起をしています。
第二次世界大戦後、帝国の時代は終わり、それまで帝国の植民地にあった弱小国は次々と独立していきました。それまで約60前後だった国の数は急増し、現在はその3倍以上になりました。日本が承認している国の数は196カ国ですが、国連加盟国数は193カ国です。また、地図によっては独立国を230カ国とするものもあります。300まで増えると、数が多すぎて困ると言っている国連関係者もいます。
しかしこの流れに逆行し、むしろ周辺地域を併合し、自国領を拡大しようとしているのが中国です。チベット、ウイグルを無理やり併合したことは言うまでもありませんが、現在でも東シナ海、南シナ海を自国領に組み入れようとしています。