中国が「カタルーニャ独立」問題にいち早く反対表明したワケ

 

一方で、現在の国民国家は一民族一国家が理想であっても、多民族国家のほうが多いのも現実です。たとえば中国もベトナムも50以上の民族がいて、ミャンマーは130以上、フィリピンは180、インドネシアは380、インドは500以上ともいわれます。

スペインはカタルーニャだけでなくバスク地方の独立問題もあり、また、ヨーロッパにはイギリスのスコットランドやアイルランドの独立問題もあります。それぞれの民族をどうするのか。中国のようにすべてを「中華民族」と架空の一つの民族にすることは、ダライ・ラマが指摘するように、文化的虐殺です。中国の独善的なウソは中華世界ではまかり通りますが、世界に押し付けることができる時代ではありません

習近平は今年10月の第19回共産党大会で、祖国統一の推進を強く訴えました。そのため、台湾への侵攻もささやかれています。武力恫喝はもちろん、国際社会に対して、「台湾は中国の一部」だと認めさせようとしています。中国がカタルーニャ問題に口を出すのも、そのためです。

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以前のメルマガでも書きましたが、中国は台湾の国際会議への参加を阻止するために、各国や各機関への圧力を強めています。一方で、欧州議会では先日、台湾の国際機関参加を支持する決議を採択しました。中国の思惑が挫かれた形です。

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それだけに、カタルーニャ問題で中国はスペインの仲間だという姿勢をわざわざ強調しているのです。スペインのマドリードにはすでに30万人以上の中国人移民がいるとされています。スペイン国内にはチャイナタウンがいくつもできています。

また、2015年には中国のワンダ・グループがスペインのサッカークラブ「アトレチコ・マドリード」の株式を20%取得しています。また、スペインリーグでは20チーム中、中国企業が出資しているなど、何らかの関係を持つクラブは16に達するとされています。

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中国人移民により相手国にコミュニティをつくりさらに投資という形で入り込んで影響力を強めていくというスタイルは、いつもの中国の手です。「一帯一路」も、そのやり方が各国で反発を招いていることは、これまでのメルマガでもお伝えしてきました。

スペインでも同様のことが進行中であり、今回の台湾人犯罪者の中国移送も、こうしたことが影響を及ぼした可能性もあります。

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