理由なき反自衛隊は止めよ。元陸自幹部が語る「利他愛精神」

2018.01.05
 

では、何故自衛隊は命をかけて救助できるのでしょうか

それは、自衛隊の任務が国家防衛」であり、「人命救助」ではないからです。そして日常の仕事が、「国を守るための訓練」をしているからです。

もちろん普段は演習場でしか訓練ができませんが、限られた地域の中で、侵略してきた「敵」に対していかに勝つかという、「戦闘行動」を焦点に、そのための補給整備や治療後送などの「後方活動」の訓練まで行っています。

「戦場」ですから、敵からの弾が飛んできて、「戦死負傷者が出て当然の状況設定となります。各訓練部隊は、その「損耗」を克服して、つまり「仲間の死」を克服してあくまで任務遂行を追求します。つまり、「を前提とした職業なのです。

例えば、尖閣諸島に中国軍が攻めてきたとします。海空自衛隊の支援を受けた陸上自衛隊の普通科(歩兵)部隊が、最終的な島の奪回のために上陸作戦を行います。この激しい近接戦闘で、仮に100名の上陸した隊員が99名戦死したとしても、最後に残った自衛隊員が島の頂上で日の丸を降り続けることができたならば、尖閣諸島を守るという任務は成功です。つまり、99名の尊い戦死・犠牲の上に使命は果たされるのです。

国としての自衛隊員へのお礼

そして国として大事なことは、この戦死者に対する「栄典」と家族への「補償」です。幕末の英雄坂本龍馬たちから先の大戦まで、この国のために戦死された方々が祀られている靖国神社に、戦死した自衛官を祀ることができますか? 任務に命を捧げる自衛官に独立した年金補償等していますか? 残念ながら、この国は未だその「補償栄典もありません。この解決無くして真の日本の独立の回復はありません。

つまり、自衛隊は普段から敵の弾が飛んでくる状況の中で、「死を前提」として訓練し、任務遂行しています。それ故に、現場の小部隊指揮官・リーダーの時から、部下を死地に向かわせるための統率・リーダーシップも死生観も、自ずから学んでいきます。

私も小さなお子さんを持つ若い隊員から「小隊長、おれ小隊長のためなら命を捧げる。何でも命令してくれ」と言われたことがあります。指揮官のために命を捧げる覚悟そういう人間関係の構築なくして部隊の真の力は発揮できません。こういう死を前提とした仕事をしているからこそ、弾の飛んでこない災害派遣では、救助できて当然で、ある意味朝飯前なのです。

もっとも自衛隊にかかわらず、いかなる組織においても、常に最悪の状況を想定して準備して対処することが大切です。特に、難しい状況を「想定外」として思考の範囲から除外することだけは絶対してはなりません。

これから大きな天変地異が予期される状況の中で、万一の時は自己犠牲してまでも他人を守るという自衛隊が存在していることを知るだけで、それぞれの組織の立場で、ハラを据えた対処が可能となるのではないでしょうか。

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