柏崎原発「再稼働」にお墨付き。それでも脱原発できない日本の憂い

 

福島第一原発の事故は、大地震や津波に対する十分な備えをしてこなかったための人災であることは言うまでもない。そのうえに大切な情報を隠ぺいする。

そんな企業が柏崎刈羽原発を動かす資格があるのか。原子力規制委員会はその点を重視してきたようにみえた。

今の委員長、更田豊志委員(当時)と前の田中俊一委員長(同)が東電の説明に怒りをあらわにした昨年2月14日の規制委会合を思い出す。

東電の柏崎刈羽原発では、2007年の新潟県中越地震で緊急時の対策室を含む事務本館が被災し、初動対応が遅れたことから、大地震に備えた緊急時対応施設として免震重要棟を新設したが、その後に定められた新基準で求められる耐震性を有していない。にもかかわらず東電はこれまで、十分な耐震性が確保されているとして規制委に諸々の説明してきたことが、この会合で判明したのだ。

更田委員は「これまで私たちが受けてきた説明とは著しく異なる」と憤った。

「審査している人がおちょくられている感じ」と田中委員長は後日の会見で不快感を示した。

国の支援で生きのびている東電は、柏崎刈羽原発の再稼働によって経営の建て直しをはかりたいのだろうが、福島第一原発の痛恨の事故を経ても、自ら全責任を負おうとせず不都合な真実を隠ぺいする官僚体質が抜けないままである。

それでも、規制委員会は国策に従い、新規制基準に適合していると認定した。

新潟県や県民らの再稼働に対する厳しい声が上がるなか、規制委は昨年夏以降、「適格性」の問題をクリアしたように見せかけるための方法をあれこれ考えた。

7月には、東電の経営陣を呼んで安全に対する姿勢を聴いた。8月には、「経済性を優先して安全性をおろそかにすることはない」との文書を東電に提出させた。

こんな形だけのことで安全が担保されるわけはない。多くの国民が納得できないはずだ。

原子力規制委員会は、規制側の役所が専門性に優る東電の言いなりになり「規制の虜」と化していた過去への反省から新設された機関である。

とはいえ、その事務局である原子力規制庁は、資源エネルギー庁、旧原子力安全保安院、環境省から送り込まれた官僚が幹部に就き、職員も一部の課を除き、ほぼそっくり保安院から移動している。原発存続を前提とし、再稼働させるための装置と見ることもできるのだ。

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