中国への負けは認めたくない。安倍官邸が原発輸出を諦めない理由

arata20180111
 

誰もが予想していなかった福島第一原発の事故から約7年。この間、小泉・細川両元総理らが「原発ゼロ法案」を提案するなど一部に脱原発の動きは見られるものの、原子力規制委員会が柏崎原発に再稼働のお墨付きを与える等、未曾有の惨事に直面した日本は、震災前と何ら変わらぬ原発政策を推し進めようとしています。メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では著者で元全国紙社会部記者の新 恭さんが、このたび大きく報道された「日本政府による日立製作所の英国原発建設への支援」について検証、なぜ政府がそこまでして原発政策にカネと力を注ぐのかを読み解きます。

日本政府の保証までつけ英国原発建設にオールジャパンで取り組む理由

米国における東芝の失敗例でもわかるように、安全対策のコストがかさむ原発の建設は採算の合わない事業になっている。

にもかかわらず、日立が英国の原発新設プロジェクトを進めようとしているのは、日本政府の強い意向があるからだ。

日立にとっては初の原発輸出。不安の方が大きい。現に、昨年12月18日、東原敏昭社長は報道各社のインタビューに、こう答えている。

企業だから、採算がとれないものはできない。政府の支援をいただきながら、採算性がきちんととれる形で、投資家をどんどん募れる環境づくりをやっていくことが重要。

つまり、同社としては政府の支援がない限りやる気はないということを表明したわけである。

これに対する答えとでもいうべき記事が今年1月3日の毎日新聞に掲載された。

日立製作所が英国で進める原発新設プロジェクトに対し、3メガバンクと国際協力銀行(JBIC)を含む銀行団が、総額1.5兆円規模の融資を行う方針を固めた。事故などによる貸し倒れに備え、日本政府がメガバンクの融資の全額を債務保証する。政府系の日本政策投資銀行は出資による支援を行うほか、中部電力など電力各社も出資を検討する。総額3兆円規模に上る原発輸出を、政府主導の「オールジャパン体制」で後押しする。

政府が保証しオールジャパンで3兆円もの融資、出資をしてまで、原発を輸出する。しかも相手はGDP世界5位の先進国である。そもそも売る側がなぜ買う資金を用立てるのか。

輸出先が新興国なら、そういうスキームもありうるだろう。

print
いま読まれてます

  • 中国への負けは認めたくない。安倍官邸が原発輸出を諦めない理由
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け