トヨタも焦った。中国EVの「一人勝ち説」は本当か?

 

世界の名だたる自動車メーカーが、中国でEVを生産しようと巨額の投資をしている真っ最中に、中国のEVメーカーが「作っても売れない」と嘆いているのです。以下、「ウォールストリート・ジャーナル」の記事を引用しましょう。

それでも、自動車メーカーは取り組みを加速させている。米フォード・モーターは先週、中国に7億5,600万ドル(約850億円)を投じてEV新工場を建設すると発表した。米テスラは上海にEV工場を建設する計画だ。

 

確かに、政府の政策である程度の需要は保証される。広州など交通量の多い都市では、ガソリン車用の新規ナンバープレートは厳しく制限されているためEVの魅力が増している。当面は多額の補助金も利用できる。例えば「宝駿 E100」の購入時に消費者が支払うのは5,400ドル(約60万円)だけ。米ゼネラル・モーターズ(GM)と上海汽車集団(SAICモーター)の合弁会社には政府からさらに8,760ドルが支払われる。

 

フィッチ・レーティングスの副ディレクターを務める楊菁氏は、電池などEVに不可欠な部品の原価は下がっているが、補助金が打ち切られれば多くのメーカーはEVで利益を上げるのが不可能になると指摘。メーカーは「市場シェアのために目先の採算を犠牲にする」か、単にEV事業からの撤退を余儀なくされるとの見方を示した。

 

一部の中国自動車メーカーの業績は好調だ。だがEVの先駆者である比亜迪(BYD)と北京汽車工業(BAICモーター)の1~9月の販売台数はそれぞれ19%減、26%減となった。両社は中国EV市場で合わせて半分近くのシェアを占めており、EVに傾注し過ぎたことが災いしたとアナリストらはみている。

 

「作っても売れない」― 悩む中国のEVメーカー

中国のその場しのぎの政策に、自動車業界も振り回されています。ここ数年、習近平が世界での存在感をアピールするために、世界各国を回っては支援金を大盤振る舞いし、ボーイング社の飛行機を28兆円も買ったり、支援金をばらまいたりしました。また、インドネシアでの新幹線の受注にも成功しました。しかし、新幹線は完成することなく放ったらかされています。

自動車業界で存在感を示すために、各国の自動車メーカーが競って開発しているEVを利用して、メーカーにも消費者にも補助金を出して中国市場を拡大し、EV市場で世界一となりたい気持ちはわかりますが、バラマキ政策は長くは続きません

結果的には国内を混乱させ技術をムダにしてしまうだけです。世界は、中国政府のこうした短絡的な思いつき政策に振り回されないよう警戒する必要があるでしょう。

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