2012年9月に中国各地で発生した反日デモでは、中国国歌を歌いながら日本企業から略奪する暴徒が頻発しました。今回の成田空港の一件は、それと同じ性質のものです。ただ違うのは、中国での反日デモは中国政府が押さえ込めますが、海外ではそれができないということです。
しかも昨年10月には、国歌に対して替え歌やブーイングなどの侮辱行為を禁じる国歌法が施行され、香港にまで適用されています。習近平政権そのものが、愛国意識高揚政策のために国歌を利用しているのです。
● 中国の国歌法、香港にも適用、侮辱で懲役3年と罰則も強化、「一国二制度」の本土化着々
近年、習近平は絶対権力者として神格化が進んでいます。憲法に「習近平思想」が明記されることも決まり、毛沢東と並ぶ偉大な指導者という地位を獲得しつつあります。それだけに、ますます習近平の「金言」を利用して、身勝手な要求をゴリ押しする中国人の振る舞いが増えているのだと思われます。
今年の3月から、中国の中学校の歴史教科書から、文化大革命の項目が削除されることが明らかになりましたが、数千万人もの犠牲者を出した文革についての毛沢東の「誤り」を消し去ることで、建国の父である毛沢東の権威はますます高まり、そして習近平が毛沢東に並んだという評価をつくることで、習近平も絶対無謬の指導者と崇められようとしています。
そんな習近平の進める国威発揚に乗っかって、中国人が海外で愛国無罪を叫んで傍若無人に振る舞う、ということが起きているわけです。習近平政権としてもここは痛し痒しで、せっかく中国の偉大さを世界にアピールしようとしても、「中国国歌=中国人が難癖をつけるときのテーマ曲」というイメージがつけば、大国の威信は丸潰れです。
いずれにせよ、習近平の神格化がさらに続けば、同様のトラブルが世界各地で発生し、中国の滑稽さがますます露呈してくることになるのだと思います。
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※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2018年2月6日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。