三浦半島のビーチのどこかに出現。完全予約制の「焚火カフェ」

2018.02.17
 

実は、寒川さんの「焚火カフェ」はワークショップ形式であることも特徴で、ご自分で手を動かしながらも、道具の使い方や作業を説明してくれる形で進みます。先ほどの火おこしに加えコーヒー豆を焙煎したり、ミルで挽いたり参加者が作業を担当するパートも。次から次へと取り出される道具の数々にこちらは本当に目が釘付けで、いちいち感動したり、質問攻撃を浴びせてしまうのですが、どんな疑問にも丁寧に答えてくれる寒川さん。

 

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晴れた日の冬のビーチは、空気が澄みわたり最高に気持ちがよい場所です。

聞けば、「焚火カフェ」は今年でもう12年目になるのだとか。いただいた名刺には「アウトドアライフ・アドバイザー」の肩書きの文字があり、アウトドアライフに関わる様々な活動を行われていますが、その核であり、ご自身のライフワークであるのが「焚火カフェ」だと話してくれました。

 

もともとアウトドア用品を販売するお店をやっていて、そこで販売している商品をデモンストレーション的に紹介するため焚火のワークショップのようなことをはじめたのがきっかけなのだそう。

なんとなく人から人づてに「焚火カフェ」のことが伝わり、噂を聞きつけた人たちから問い合わせが入るようになり、今に至るという経緯だそう。簡単に言えば、とにかく焚火が好きで好きをそのままライフワークにしてしまったようにも聞こえますが、実はこの「焚火カフェ」には寒川さんの哲学がたくさんつまっているんです。

焚火の中に仕込んだ小さなダッチオーブンの中身は、自家製のラムレーズンに漬けた焼きりんご。

ビーチでいただく挽きたてのコーヒーと焼きりんご。シンプルで贅沢な組み合わせです。

僕はずっと防災のことを考えているんですよ」と話す寒川さんは、防災はもっと日常生活の中にあっていいし、身近なものであるべきだと言います。

 

「アウトドアには防災の基本が全部入っています。例えばこうやって何もないところから火を起こすってこともそうだし、道具にしてもそのまま防災グッズとして使えるものばかり。別にエキスパートになる必要はないけれど、何事も体験したことがあるのとないのとでは大きく違いますよね。何か災害に見舞われたときに、少しでもアウトドアの知識があればパニックに陥ったりもしないと思うんですよ」と寒川さん。

だんだんいい感じに陽が傾いてきましたが、これからが一番のお楽しみタイムです。

日本のようないつどこで大きな地震が起きてもおかしくない“地震大国”に生きるということは、常に防災の意識が必要だということはみなさんもご存知のとおり。2011年の震災のときには、首都圏近郊でも大規模な停電があり日頃からの備えが大切だということを痛感した人も多いのではないでしょうか。

 

防災対策やそれに対して意識を持つことはとても大切だけれど、毎日毎日万が一のときに備えてという気持ちでいることはできないし、“防災”“防災”と叫んでばかりいるのも楽しくないので、それならアウトドアで遊びながら防災時に役立つ知識を身につけてはどうだろうか、ということを世の中に向けて真剣に提案されている方なんです。そして、これが寒川さんの開催する「焚火カフェ」がワークショップ形式である理由。もちろん、ワークショップといってもあくまでもテーマは「焚火カフェ」なので、学びのレッスンという雰囲気ではありあせん。参加者たちがそれぞれ自由に「焚火カフェ」での時間を過ごす中で、自然と火の起こし方だったりアウトドア用のナイフの使い方だったりを見聞きすることができるようになっているという塩梅です。

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焚火で暖をとりながら、少しずつ色彩を変えていく空と海を眺めて過ごします。

「山に登るとか、キャンプに行くとか本格的なアウトドアはなかなかできないという人も多いとおもいます。東京で日々忙しく過ごされている方々にとってたまの週末にこうやって1時間くらいかけて海に遊びに来て、午後から夕暮れにかけてのひととき焚火をしながら過ごし、陽が沈んだあとも色彩を変える空を眺めのんびりとした気分になって帰る。これだけでもけっこう満足度は高いと思うんですよね。なので、そんな気軽にできるアウトドア体験の中で遊びとして色んな知識を見聞きしてもらえればいいなと思っているんです。」

 

寒川さんの言葉になるほど、と頷きました。日頃はモノが溢れかえる日本ですが、何か起きたときにはあっという間に店頭から姿を消します。アウトドアの遊びの延長で、ライフラインを確保するための道具も個人個人が揃えておけば、いざというときに必ず役立つというわけです。

焚火を囲みながら交わす会話も「焚火カフェ」の楽しみのひとつ。

災害がおきたときには物資も人手も圧倒的に足りなくなるので、それぞれがギアを持っていることはとても大切です。寒川さんの「焚火カフェ」には、海岸で焚火をしながら過ごすリラックスを楽しんでもらいながら、実はこんなメッセージが潜んでいたんですね。

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ビーチから眺めるサンセットは毎回違う景色に染まり、飽きることがありません。

「と言いながら、毎日、大好きな焚火をして楽しんでいるだけですよ」と笑う寒川さん。とにもかくにも基本は“ナチュラルボーン焚火ラバー”であることは間違いありません。いつでもどこでも焚火ができるよう海外に行くときも焚火グッズを持参していくというのですから。荷物検査が厳しいこの時代、何度もセキュリティで足止めされ大変な思いをされた体験もあるそう。そんな焚火のこぼれ話にはじまり、本当に使えるアウトドアグッズの話、これまでに眺めた素晴らしい風景の話、そしてアウトドアの哲学について…などなど話題はつきずどのテーマにおいてもかなり面白い話が聞けるとおもいます。

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陽が沈んだあと空に広がる余韻をたっぷり楽しむ、シンプルで贅沢な時間。

なんだかあれこれと書きましたが、「焚火カフェ」の楽しみ方は、単純に焚火がしたい!とか、ビーチで優雅なサンセットタイムを過ごしたい!とか、自分で焙煎したコーヒーを飲んでみたい!とかでいいのです。お客さんにはリピーターの方も多いそうで、毎年記念日にご夫婦で予約される方もいらっしゃるとかで素敵です。「焚火カフェ」の使い方としてはそちらのほうが王道かと。ただ、純粋に焚火タイムを楽しむという目的はもちろん、アウトドアのことをもっと知りたいとか寒川哲学に触れてみたい!とか、そんなテーマで参加するのもあり、な「焚火カフェ」だとおもいます。

ちなみに女性グループでの参加もわりと多いそう。気になった方は臆することなく、まずはコンタクトをとってみることをおすすめします。

 

 

【基本料金】
2〜3人での利用:1人当たり3500円
4人以上での利用:1人当たり2500円
(体験レクチャーつき)

メニュー
★焚火焙煎コーヒー:ポット4杯分2000円
★スウェーデンスタイル焚火コーヒー:カップ6~8杯分2000円
★焚火チョコラテ:カップ4杯分2000円
★焼きリンゴ:1000円
★ホットサンド:1000円
★焼きマシュマロ:500円
★焼きソーセージ:1000円
★焚火POPコーン:500円
★自家製ホットワイン:500円

【所要時間】日没前約2時間
【注意事項】飲食物の持ち込み不可、雨天中止(雨天時はキャンセル料なし)

公式フェイスブック(お問い合わせはフェイスブックから)

 

 

取材・文・写真 / 小林繭 

※この記事はジモトのココロで掲載されました(2018年)

 

小林繭

小林繭(こばやしまゆ) / 東京生まれ、湘南生息中のフリー編集ライター。沖縄、ハワイ、島、旅モノやロハスネタを発信中。All About沖縄ガイド。目下、踊れる編集ライター目指し趣味のフラメンコに取り組む日々。http://allabout.co.jp/gm/gt/110/

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