児童に対する嫌がらせも。「アルマーニの制服」は何が問題なのか

 

それはともかく、私立校のケースなどがそうですが、ワシントンDCやNYなどの大都市で通学圏が広域にわたるためにスクールバスを回しきれない、そこで公的交通機関で通学するという場合に、制服が安全面で子どもを保護するという機能を期待していると考えられます。

アメリカの場合は、州にもよりますが13歳以下の場合は子どもだけで行動されることはないので、細かな事情は少し違いますが、日本の都市部で小学生に制服を着せて登下校させるというのは、この「被害者にならないための安全確保という機能を考えているという点では同じことだと思います。

というのは、大人社会から見て「小さな子供が制服で登下校している」というのは社会全体として「保護しやすい」からです。困っていたら駅員や商店の人などが声をかけるというのもしやすいですし、仮に通常の通学ルートを大きく外れているとか、「親でなさそうな大人」との不自然な関係などが目立った場合も保護しやすいことになります。

つまり幼い小学生が制服で登下校しているというのは、社会から見て「公的な行為」であり、そのために「社会として遠巻きに保護」することが簡単になるのです。そのために制服というのは、「堅苦しいイメージが多少なりとも必要であり、デザイン的には禁欲的なものが要求されることから、フォーマルであったり、軍服を転用したデザインであったりするわけです。

今回の「アルマーニ制服」の問題はこの点にあります。まず、アルマーニというのは、立派なフォーマルもやっていますが、社会的な認知としては「禁欲的」というよりは「オフ向けのゴージャスなカジュアル」という記号になっているのではないかと思います。大人社会が「そっと見守って保護する」対象として「禁欲的な記号」を持つべき制服として、これはカルチャーとして少しずれているのではないでしょうか。

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