性的暴行疑惑のアベ友ジャーナリストを見逃した警察官僚の出世欲

 

「事件のことを分かっているのは高輪署。なぜ刑事部長が判断できるのか」と野党議員。

警察庁官僚は答える。「専門性の劣る警察署に本部が指導するのは通常のこと」。

キャリアのどこに専門性があるのか」と怒鳴る野党議員。少なくとも捜査の専門性ということなら、野党議員の指摘はもっともだ。

下積み生活を知らないエリート警察官僚の中村氏。他のキャリアと同じく、警察庁に入庁して三年目には和歌山県警捜査第二課長となり、捜査のイロハも身についていないうちから県警記者クラブメンバーの来訪を受ける立場となった。

在外日本国大使館一等書記官としての外務省出向も、ほぼお決まりのコースだ。いつどのように捜査の専門性を磨いてきたのだろうか。実績より肩書きばかりがどんどん先行していったのではないか。

警察官僚として広い視野を持つことはいい。だが、少なくとも山口敬之氏の性的暴行疑惑事件で、TBSワシントン支局長という肩書や、安倍首相の友人であることに配慮したように見えてしまう行為が、幅広い知見に基づくものとは評価されないだろう。

しょせんは、出世欲の虜となった日本の官僚なのである。その点では確定申告期を迎え、森友文書隠蔽で批判のマトになっている佐川国税庁長官も同じだ。

マックスウエーバーは1919年、「職業としての政治」という学生たちに向けた講演において、国家を「合法的な暴力行使を独占する組織」と位置づけた。

倫理観が欠如した政治権力と捜査機関が強く結びついた時、どんなことが起きるのか。安倍政権のもとで、数々の疑惑がもみ消され、「共謀罪」法や秘密保護法など、国民の自由を脅かす法律が生み出されている。

権力はそのなかに暴力をはらんでいる。だからこそ、それは国民のために、公平公正を守るために使われなければならない。なのに、人を生かすも殺すも、権力者の胸三寸、親しい者は見逃し、刃向かった者には長期にわたる拘留を強いている。民主主義が壊れていくさまを見るのはつらい。

 

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