京大、伊藤忠からの引きこもり。哲学者・小川仁志の波瀾万丈半生

2018.03.05
哲学 小川仁志 波乱万丈
 

今まで100冊以上の著書を出版し、去年はNHK『100分 de 名著』で哲学を知らない人たちに向けて「ラッセルの幸福論」をわかりやすく紹介したことでも話題になった哲学者の小川仁志さん。しかし、そんな小川さんの半生は、哲学者ラッセルの人生同様に波瀾万丈でした。京大卒、伊藤忠商事入社からのフリーター、引きこもり。さらに公務員を経て、大学院卒、哲学者となり、現在は山口大学准教授に。哲学との出会いがどのように小川さん自身を変え、人生を彩っていったのか、連載全5回で波瀾に満ちた半生を振り返ります。

プロフィール:小川仁志(おがわ・ひとし)
1970年、京都府生まれ。哲学者・山口大学国際総合科学部准教授。京都大学法学部卒、名古屋市立大学大学院博士後期課程修了。博士(人間文化)。米プリンストン大学客員研究員等を経て現職。大学で新しいグローバル教育を牽引する傍ら、商店街で「哲学カフェ」を主宰するなど、市民のための哲学を実践している。2018年4月からはEテレ「世界の哲学者に人生相談」(木曜23時〜)にレギュラー出演。専門は公共哲学。著書も多く、海外での翻訳出版も含めると100冊以上。近著に『哲学の最新キーワードを読む』(講談社現代新書)等多数。 ブログ「哲学者の小川さん

小川仁志の情熱人生―挫折、努力、ときどき哲学 第一回

これから5回に分けて私の半生について書いていきたいと思います。現在47歳なので、ちょうど人生半分くらいかなと思っています。そのメタボ体型で94歳まで生きられると思ってるのかという突っ込みが来そうですが、あくまでこれからは健康に留意して生きていくという前提です。

実は私は、ちょうど今から10年ほど前、37歳のときに、すでに半生記を書いて出版しています。『市役所の小川さん、哲学者になる 転身力』(海竜社)という本です。その本が作家としてのデビューでした。あれから10年ちょっと、いろいろなことがありました。その本も絶版になっているので、その後の話も含めてちょっと振り返ってみようかと思います。

というのも、この10年間、様々な場所で取材を受けるたび、本題よりも小川さんの人生に興味があると言われ続けてきたからです。哲学の特集はもちろん、政治に関するコメントを求められるときもそうです。その都度、「次の機会にぜひ」と言っているのですが、なかなかそういうわけにもいかず、何かせねばと気になっていました。

前置きが長くなりましたが、これが本連載執筆の動機です。題して「小川仁志の情熱人生―挫折、努力、ときどき哲学」。これまで私は、挫折と失敗を努力で克服し情熱的に生きてきたからです。その中にときどき哲学が顔をのぞかせています。30歳以降はかなり哲学の占める割合が大きくなっているものの、やはりそれはすべてではないのです。かつてソクラテスがいったように、哲学の目的は善く生きることであり、哲学はそのためのツールなのです。決して目的ではありません。だからあえて「ときどき哲学」と表現してみました。そのほうが、この連載を読んでくださる多くの方にも当てはまるのではないかという思いもあります。

さて、第1回目は、今私が何をやっているのか、そしてここに至るには一体何があったのか、幼少期にさかのぼり、社会人になるくらいまでを一気に紹介していきます。いわゆる小川仁志エピソードワンです。スターウォーズにならうなら、これはもっと後の回でやってもいいのですが、まぁわかりやすいように時系列でいきたいと思います。

現在、私は「哲学者」と名乗って活躍しています。毎月1冊くらいのペースで合計100冊近くもの本を出し、その多くは海外でも出版され、大学で教鞭をとり、「哲学カフェ」などのまちづくり活動も行っています。その他、講演や連載、全国放送のテレビにも出演し、4月からはEテレの新番組「世界の哲学者に人生相談」にレギュラー出演します。哲学の番組だなんて画期的だと思いません? しかもその指南役です。

ただ、ここまで来るには本当に紆余曲折があったのです。これから徐々に紹介していきますが、大きく分けると、子どものころから就職するまで、商社マン時代、フリーター・引きこもり時代、市役所職員&大学院生時代、哲学者としての10数年という5段階です。これを見ていただいただけでも、紆余曲折を感じていただけるのではないでしょうか?

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