高城剛氏インタビュー 「2018年、日本と世界はこう変わっていく」

 

MAG2 NEWS:続いて、毎年お聞きしている経済動向についても、伺えればと思います。

高城:一介のクリエイター風情に経済動向を聞くのもなかなか変な時代なんだと思いますが、仕事柄、世界の隅々まで頻繁に行って、様々な人たちにお目にかかることがあるので、肌感覚で感じるものがあるのは、確かです。それと、これこそ、仕事柄だと思うのですが、メディアと景気や経済動向はとても近いと考えています。

少しだけ、歴史を振り返りましょう。

1920年代は、米国は好景気に沸いていて、著しい成長を背景に、大量生産大量消費時代に突入し、「大衆」という概念が生まれ、「狂騒の20年代」(Roaring Twenties)と呼ばれてました。この時、普及したのがラジオです。

このラジオがはじまったのは、ピッツバークで、時は1920年11月2日でした。

この日付から、もしかしたらピンと来た方もいらっしゃるかもしれませんが、「スーパーチューズデー」、つまり米国大統領戦にあわせてラジオ放送を開始したんです。

これに皆、驚きました。

なにしろ、人類史上初のリアルタイムで離れた場所から事象を伝えることができる新しい大衆伝達手段だったからです。

翌年、1921年から22年にかけて、時代の好景気に押されるように、あっという間にラジオは普及。

当時のキラーコンテンツは、リアルタイムに聞くことができるニュースと音楽で、人々はまるで未来から来た機器のようなラジオに魅了されていきました。

ラジオで音楽を流すのは、随分と反対もあったそうで、最近のインターネットで音楽を流すどころの騒ぎじゃなかったと言います。

なにより、音響に苦労し、オーケストラをライブ演奏したのはいいのですが、部屋の反響によって音響がメチャクチャで聞けたものではない。

そこで、オーケストラを戸外テントを張ったなかで演奏させたところ、今度はテントが吹き飛んで、次にはテントを広い部屋のなかに張って演奏をすると、それなりに聞こえるようになった。

いまでは、どこのスタジオでも当たり前になったが、吸音のために壁に布を垂らしたり、なにかを施すようになったのは、この時からなんです。

この米国大統領戦で始まったラジオのニュースは、遠く離れた場所に起きたトピックを、新聞よりはるかに早く、リアルタイムで手に取るように理解できたので、大衆のなかでも、ある特定層に熱狂的に好まれました

それが、投資家です。

投資家は、誰よりも早く情報を手に入れようと、ラジオと巨大アンテナを自宅に設置し、行ったことも見たこともない土地にある企業に次々と投資し、株式市場は日に日に熱くなって行きました

また、このラジオというメディアの登場とともに投資を始めた者も多く出ました。まるで、昨今の仮想通貨のように

こうして、狂騒の20年代は高揚するんです。

1929年の世界恐慌が訪れるまで。

この恐慌から、第二次世界大戦へと突入します。

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そして1941年3月、米国でNTSC方式の白黒テレビ放送が開始。

テレビは1930年代に開発されてましたが、広く販売されるようになったのは、第二次世界大戦後になってからです。

1946年には、全米のテレビ普及台数は1万7000台しかなかったのですが、3年後には、毎月25万台のテレビが販売され、50年代を通じて全米の家庭の4分の3が少なくとも1台のテレビを所有しました。この間、米国は第二次世界大戦戦勝国として、好景気に湧きました。

ですが、まるでテレビの普及が一般化したのを見計らうように、米国経済は悪化の道をたどります。

1960年代には、凄まじいほどに経済が減速し、1971年8月15日、ついに米ドル紙幣と金との停止を宣言したニクソンショックが起きるんです。

これ以降、世界は今日まで続く変動相場制へと移行します。

1980年代になると、米国で「ニューメディア」と呼ばれるケーブルテレビと衛星放送が勃興します。既存の基幹放送だった地上波テレビではなく、ニュース専門局のCNNや音楽専門局のMTVなど、専門性の高い放送局が次々と開局。1980年代中盤には、家庭のケーブルテレビ(もしくは衛星直接受信)の普及率が50%を超えるまでに、「ニューメディア」は急成長しました。

そして、1987年10月19日月曜日、史上最大規模の世界的株価大暴落ブラックマンデー」が起きます。

もう、おわかりかと思いますが、メディア、というより情報の伝搬システムの変化がバブルを生み、そして必ず崩壊するんです。

世界最古の金融バブルと言われるオランダのチューリップバブルから仮想通貨まで、人類史におけるバブルとその破綻はそれまでになかった情報の爆発によって引き起こると僕は考えてます。

ある時、「魔法の機械」を入手した日から、人々はまったく知らない世界の情報を簡単に手にするようになり、どこからともなく欲が湧き、悪巧みを考える。

ウッシッシ、これを使ってどうにか、ひと儲けできないか、と。 

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