もう少し、メディアと社会変化について、お話します。
1980年代、本格普及が始まったケーブルテレビと衛星放送は、いくつもの言語がある欧州でも普及し、ドイツ語放送をイギリスで見ることや、フランス語放送をイタリアで見ることが出来たので、とりわけ国境を超えて生活する移住者に大変好まれたサービスでした。
なにより、簡単に国境を越えることが出来る衛星放送は、東側と呼ばれていた「壁」の向こうでも受信可能だったんです。
MTVやCNN、スポーツ専門局のHBOから数多あったクッキングチャンネルまで、西側の番組を見た「壁」の向こうの人々は、あまりの生活の違いに驚いたそうです。
噂にしか聞こえなかった西側の生活が、違法とはいえ毎日のようにテレビから流れ、世界の真実を垣間見ることになりました。こうして、東側の人々は、自国の政治や社会システムを疑問を持つようになっていきます。
そして、ベルリンの壁が崩壊。
これ以降、世界はひとつになり、グローバリゼーションという思想が席巻します。
1995年には、誰でもコンピュータを触れることを可能にしたオペレーティング・システム「Windows95」を搭載した「魔法の機械」が、一斉に発売されました。
スーパーマーケットのソフトドリンクの横に山積みされたコンピュータは、持ち帰って、電源を入れれば、誰でも扱うことができたので、瞬く間に普及したんです。
その「魔法の機械」は、ネットワーク、と言っても当時は、AOLなどのパソコン通信に接続可能で、遠く離れた場所に起きたトピックを、テレビやラジオ、そして新聞よりはるかに早く、リアルタイムで入手することが可能でした。
これが、大衆のなかでも、ある特定層に熱狂的に好まれたんです。
投資家です。
投資家は、誰よりも早く情報を手に入れようと、早い回線とルーターを自宅に設置し、行ったことも見たこともない土地にある企業に次々と投資し、株式市場は熱くなります。
また、このパーソナルコンピュータおよびネットワーク、というかパソコン通信というメディアの登場とともに投資を始めた者も多くいました。こうして、狂騒のインターネットバブルは、幕を開けました。
2000年に崩壊するまで。
実は、インターネットが普及したのは、インターネットバブル崩壊後です。
米国では2001年から2002年にかけて、普及率が40%から60%に急進。2007年に75%まで伸びました。そしてこの間、米国では、あたらしいバブルが巻き起こっていました。
それがサブプライムで、ご存知のように崩壊し、いまも世界経済は完全に立ち直ったとは言えません。
しかし、よく考えてください。現在、スマートフォンと高速ワイヤレス回線によるバブル崩壊を、僕らはまだ迎えていません。
もし、僕の仮説、つまりあたらしい「魔法の機械」の普及によって「情報の爆発」が人間の欲望による悪巧みを掻き立て、それがバブルから崩壊へと誘うのが近代史の教えだとしたら、スマートフォンと高速ワイヤレス回線が地球の隅々まで普及したいま、必ずバブル崩壊が起きるのではないでしょうか。しかも人類史上最大の。なにしろ、この10年の情報量は、それまで何万年の情報より多いんです。
10年前にスマートフォンが登場し、急速に世界中に普及してから、まだ経済的な大きな変化は起きていません。
最近、AIから自動運転まで、「先の不安」ばかり話し合っているように見えますが、その前に「それまでのツケ」を必ず支払う必要があるんです。
つまり、スマートフォン・バブルのツケは、必ずやってきます。
この先数年は、波乱万丈になるでしょうし、同じほどチャンスがあるとも言えますね。
MAG2 NEWS:ズバリ、どんなチャンスがあるのでしょうか?
高城:1920年から1933年まで、米国では禁酒法の時代でした。
「酔いをもたらす飲料」の販売が一切禁止され、先ほどお話しした「狂騒の20年代」から「世界恐慌」につながる、まさにバブルから崩壊期のことだったんです。
この時、違法に酒を売ってた場所は「スピークイージー」と呼ばれ、これが今日のクラブカルチャーへとつながります。当時の音楽はジャズで、「スピークイージー」に欠かせないサウンドだったんです。
また、この時に密造酒を売って大儲けした人たちがいます。
それが、ブッシュ家とケネディ家などで、その資金を元に政治に進出しました。
実は名家でも、なんでもないんですよ。
もし現在、史上最高の株高から、そのバブルが崩壊する過程にあるとしたら、当時の「酒」に代わるものは、「大麻」だと思いますね。
WHO(世界保健機関)によって大麻が禁止になったのは、1937年からで、酒の解禁と交代になったことがよくわかります。
アルコール業界や石油業界のロビー活動もあったんでしょう。
しかし、人間の体に害を及ぼすのは酒のほうが明らかで、消毒液ぐらいにはなっても、薬にはならない。この大麻が現在、続々解禁へと向かっています。