今の状況は、携帯電話業界で言えば、アップルからiPhoneが発売されて、アーリーアダプターたちに熱狂的に受け入れられた時期にとても似ています。当時、既存の携帯電話メーカーは、iPhoneに多少の危機感は持っていたものの「あんなものは、作ろうと思えばいつでも作れる」と言いながら、結局ソフトウェアに関しては、グーグルから提供してもらわなければならず、主導権を握れず、コモディティ化の道をたどりました。
このまま突き進むと、一部の自動車メーカーは、ソフトウェアを甘く見て独自OSを開発しようとして失敗し、残りのメーカーは、ソフトウェアに関してはグーグルに全面的に頼った結果、同じく主導権を失ってコモディティ化するという、携帯電話業界で起こったのと同じような顛末を迎えるような気がしてなりません。
テスラが毎月のようにソフトウェア・アップデートを繰り返し、その度に、新しい機能を提供したり、ユーザー体験を改善して既存のテスラオーナーたちを喜ばせていることの意味をちゃんと理解する必要があります。
私は、テスラのModel Xを購入して、まだ1年しか経ちませんが、その間に、オートパイロットの機能は大きく進化したし、オートパーキングのような新機能も追加されました。これまで様々なメーカーの自動車を運転して来ましたが、こんな体験は初めてで、「テスラを買って良かった」とつくづく思います。
トヨタ自動車に限らず、全ての自動車メーカーが、「仕様を固めてから実装する。大幅なアップデートはモデルチェンジに同期して」という旧来型のソフトウェア作りから、「ユーザーからのフィードバックを受けながら、リリース後も細かく改良して、より良いものに作り上げて行く」という作り方に大きくシフトをする必要があるのです。
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