米中軍拡競争
【東京】は2面に基本的な情報の記事と解説記事「核心」。4面と11面に関連記事。見出しから。
2面
- 主席任期を撤廃へ 全人代開幕
- 中国国防予算8.1%増
- 米との軍拡競争激化
- 「軍民融合」で兵器開発
4面
- 中国外交官の出世
11面
- 習氏に権力集中 前面
- 政府活動報告、犯罪抑制で求心力増
- 反腐敗運動指揮 王岐山氏 ひな壇に
uttiiの眼
《東京》も《読売》と同様、中国の「軍拡」に注目しているが、《読売》が米軍のプレゼンスを脅かす存在として、ひたすら中国軍の増強に視線を注いでいるのとは違い、「米との軍拡競争激化」という捉え方になっている。さながら、米空母の甲板からものを見ているような《読売》と、米中両国とは等しく距離を置こうとしている《東京》との違いだろう。米国の軍事費は世界の約36%を占めトップだが、中国は約13%で、「最新兵器の開発で差を補おうとしている」というのが、基本認識になっている。
それでも、書かれている事実は中国軍の増強の具体的な姿。さらに、新兵器の導入とともに図られているのが「量から質」への転換。「兵力30万人を削減し、従来の7大軍区を5戦区に再編。縦割りの弊害があった陸海空軍を統合運用する態勢をつくる」のだという。
4面に中国取材を長く続けている加藤直人論説委員による興味深いコラムがある。
今回、楊前外相が重用され、王毅外相も副首相級の国務委員への昇格が予想されていることで、「外相経験者の重用は習指導部が国際社会との協調路線にかじを切った結果との好意的な受けとめもあるが、『党の指導』が最優先される国だけに、『外交の復権』と手放しで喜べない外交官も多いようだ」としている。
また、外交官出世の背景については「反腐敗闘争で政治基盤を固めた習氏が、求心力を高めるための対外的な緊張状態を作る必要がなくなった」からという見方がある一方で、「中国の経済成長が鈍化する中、習氏肝いりの『一帯一路』構想を進め、『中華民族復興の夢』を実現するため日米はじめ周辺国との協調が不可欠になった」ということもあるようだ。そして、「中国の外交政策を動かすのは出世を遂げた外交官ではなく、『1強』習氏の意を体した党中枢の知恵袋なのであろう」と結んでいる。貴重な識見。
あとがき
以上、いかがでしたでしょうか。
中国の国民が自ら独裁を選ぶのなら、それに対して何も言うことはありませんが、反対論が強い力で押さえつけられているのだとしたら、歴史上存在したいくつもの独裁政権と何ら変わらない。様々な不都合が出てくれば、やがては「民族」をテコにして求心力を回復しようとするでしょう。既にそんな感じのスローガンも掲げられているようですから、もう走り始めているのかもしれませんね。厄介なことです。
というところできょうはここまで。