炭酸泉はキケンなのか?「有馬温泉死亡事故」を温泉のプロが検証

 

ではまず、この事件についておさらいしてこう。

2月21日夜、神戸市北区の有馬温泉街にある市立歴史資料館太閤の湯殿館で施設職員が突然倒れて死亡した。亡くなったのは、施設を管理運営する官民組織「神戸観光局」の男性職員(48)で、兵庫県警などによると、この職員は資料館1階に展示されている「岩風呂遺構の底(深さ1.7メートル)にいたネコを捕まえようとして倒れたという。 岩風呂の遺構は約5メートル四方で、転落を防止するため周囲にアクリル板の柵がある。男性は21日の営業終了後、館内に入り込んだネコを捜していたところ、遺構内で発見。 助け出そうと遺構に入り、すぐに倒れたという。

有馬温泉観光協会などは22日に現地で会見を開き、同席した京都大の西村進名誉教授(物理地質学)が「有馬のような炭酸泉の温泉地では、地中から炭酸ガス(二酸化炭素)が出てくる。現場は気温が低く人の出入りも少ない状態で、風もないなど、炭酸ガスが滞留しやすい条件がそろっていた。地下から炭酸ガスが噴出し濃度が高まって酸欠で倒れた可能性が高い」との見方を示した。有馬温泉観光協会によると、大気中の酸素濃度は21%程度だが、死亡した施設職員が現場から搬出された際、13~14%に低下していたという。

神戸市の久元喜造市長は22日の定例会見で「大変痛ましい事故で残念だ。温泉に詳しい専門家の助言を得て、専門業者にガス濃度の測定などを依頼する」などと述べた。 同市などは原因究明と対策が完了するまで、施設を休館する。 (数紙の新聞記事などを筆者がまとめたもの)

ちなみに、しばしば間違われるのが「高い山に登ると酸素が薄くなる」という考え方。高山に登って下がるのは気圧であり、大気中の酸素濃度はどこでも約21%で一定である。が、気圧が下がると空気の密度が下がるため、一度に吸い込める空気の量が減って、それに比例して吸い込む酸素量も減ることになる。しかし、あくまで酸素濃度は同じで、薄くなるのは酸素ではなく「空気」もしくは「大気の密度」というのが正しい。各種の資料によれば、人間は酸素濃度16%以下だと、酸欠で死んでしまうという。

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