財務省がここまで追い込まれたのも、もとをたどれば、森友疑惑を追及された安倍首相が2017年2月17日の衆議院予算委員会において、以下の発言をしたことに行きつくのではないか。
「私や妻はこの認可あるいは国有地払い下げに一切かかわっていない。もし、かかわっていたのであれば総理大臣をやめる」
朝日新聞などごく一部のメディアが昨年2月14日に森友問題を初めて報じ、国会がざわつきはじめたところに、安倍首相のこの発言が飛び出した。決裁文書の中身に、“安倍案件”であることをうかがわせる中身があったとすれば、財務省内は首相の発言に、さぞかし慌てふためいたことだろう。
森友学園と近畿財務局の交渉の経緯を説明した項目が国会に示した決裁文書からまるごとなくなっていたという朝日の報道は何を意味するのか。
近畿財務局は2015年5月に森友学園と定期借地契約を締結した。国有地を定期借地で貸し付けるという特例の背景には、いわゆる「愛国教育」を実践する小学校新設について、大阪府知事や安倍夫妻の期待感が高まっていたという事情があった。
2014年4月以来、何度か森友学園の塚本幼稚園に来園していた昭恵夫人との親密さを籠池理事長が近畿財務局に吹聴していたこともよく知られている。
そんななかで、塚本幼稚園の教育にほれ込んだ昭恵夫人が小学校の名誉校長に就任した。2015年9月5日のことだ。
そこからは、昭恵夫人の名で威嚇する籠池理事長の思い通り、急テンポでコトが運んでいった。3月6日の朝日新聞にはこう続報が書かれている。
学園からの要望内容やそれに同省がどう対応したかについての記述が複数の箇所でなくなっている。同省は土地取引問題が発覚した昨年2月以降、学園への便宜を国会で否定しており、そうした答弁に沿う形になっていた。…また、学園側が早く土地を買うために価格を示すよう財務局に求めたとも記載。それに対して「学園側の提案に応じ」「価格提示を行うこととした」とも記されていた。国会議員らに開示された文書では、こうした記載が元々あった場所から消えている。
文書は、安倍夫妻との関連を拭い去るように書き換えられたのではないだろうか。
その不法行為の裏に安倍官邸から財務省へ強い働きかけがあったというのは下衆の勘繰りかもしれない。だが、森友問題全般にわたる政府の徹底した隠ぺい姿勢が、そうした疑念をよりいっそう深くしているのは間違いない。
どうして、そこまで隠そうとするのか。特別扱いしてまで森友学園の小学校を実現させることに財務省として何のメリットもない。どこからかの大きな力が財務省官僚に加わっているとみるのが自然ではないか。