不気味に進む「米朝会談」、日本にとって最悪のシナリオは?

 

ですから、少々気が早いのですが、会談に関してとりあえず7つのシナリオを提示してみたいと思います。

(1)会談不成立、トランプは何も手が打てない

(2)会談不成立、核施設への空爆を前提に情勢緊迫

(3)会談成立、しかし決裂、その後は(1)もしくは(2)となる

(4)会談成立、非核化合意、緩衝国家として北は存続

(5)会談成立、非核化合意、米国は朝鮮半島から撤退

(6)会談成立、非核化合意、なし崩し的に半島再統一

(7)会談成立、非核化合意、再統一、その後統一国家が波乱要因に

非常に大雑把なまとめであり、(5)〜(7)というのは別のシナリオではなく、順番にこのように事態が進むという可能性があるわけです。

ズバリ、日本の国益を考えると(4)が最善であり、それ以外のシナリオに進むということは、明治以来の国家的危機を招く危険性があります。

仮に(1)となった場合でも、もはや「嫌韓」や「北朝鮮への制裁強化」などで日本国内のふわっとしたナショナリズムを政治的求心力にするという、現在の政治風土などでは、到底受け止められない厳しい事態になると思います。これは安倍政権ではダメだという意味ではなく、他の政権になって「より良い対応」ができる可能性は薄いので消去法でも良いので、安倍政権の実務能力を維持しながら、事態に対応するのが現実的というのが私の立場ですが、それはともかく、(1)でも大変に厳しいと思います。

この(1)にも出口がないわけではありません。一つの可能性としては、「トランプの顔を潰す」ために、中国が北朝鮮を動かして核放棄をさせるというシナリオです。ですが、仮にそうなってもトランプは「中国を動かしたのは私で、完全に公約通りになった」と胸を張るでしょう。その場合に、仮に「日本だけが最後まで強気の圧力」を続けていたら、本当に孤立してしまいます。結果は(4)になって日本にとって最善なのに、外交では大きな失点となるわけです。

一方で、(5)以降は悪魔のシナリオです。統一国家が「極めて中国寄りとなる可能性」そしてそれを「トランプが放置する可能性」、更には、「統一国家の民主主義が後退する可能性」など、考えるだけでも厳しいです。

その厳しさというのには2通りがあります。1つは、こちらの方が深刻なのですが、統一後の社会の混乱を収拾できない統一政府が反日カードを切るということです。具体的には竹島だけでなく、対馬などを巡ってのトラブルを仕掛けるという可能性です。

もう1つは、韓国内の軍や保守勢力が左寄りの統一政権」に対してゲリラ的な実力行使で抵抗を始めて内戦的な混乱状態が発生する場合です。このシナリオの場合には、難民の流入だけでなく、日本国内にも大きな影響があります。例えばですが、アメリカで政権交代があって「リベラルホーク」的な新政権が生まれ、「在日米軍を使って韓国の右派ゲリラを支援する」などという話になった場合には、日本はかなり深刻な「巻き込まれ」をするでしょう。

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