例えば、洋服の販売員を長年やっていると、洋服に囲まれる生活が当たり前になっていきます。その日に着る洋服だって、数ある洋服の中から悩んで決めるというのが普通になっていくわけです。
でも、お客様が同じ悩みを持っているかというと、そうではありません。一般のお客様は、洋服を売っている販売員ほど、多くの種類の洋服を持っているわけではありません。だから、その日に着る洋服を選ぶときも、そんなに多くない種類から、「いつも同じもの着てると思われないように」とか、「少しでもオシャレに見えるように」といったことを考えながら洋服を選ぶわけです。同じように洋服を選ぶ際の悩みも、業界にずっといる人と、一般のお客様とでは、全く違う悩みになっていくのですね。
そんな感じで悩みが違うのにも関わらず、「この洋服はこんなものと合わせるといいんですよ。持ってるでしょ?」という接客をしても、お客様としては、「この人とは感覚が違うんだな」と感じてしまいます。そのズレのせいで、お客様は販売員のことを「自分の悩みを理解してくれない違う世界の人」という認識してしまい、信頼も失っていくものです。