現代の刀匠の最高位のひとつである「無鑑査」に認定され、国内のみならず海外でも高い評価を受ける松田次泰氏。そんな松田氏が「身の引き締まる思いがした」という、零戦のエースパイロットが口にしたある一言が、今回の無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』で紹介されています。
ゼロ戦エースパイロット坂井三郎さんの言葉
古の名刀を超える技を目指し、人生のすべてを刀づくりに注ぎ込んできた松田次泰さん。その仕事観、人生観に迫りました。
仕事と人生 松田次泰(刀匠)
僕が何歳まで刀をつくり続けられるかは分かりませんが、やはり人生も仕事も、大事なことは諦めないということ、それしかないですね。
自分で「これだ」というものを掴むまでは、とにかくもう、やるしかありません。失敗しても、諦めないでやる。失敗にどれだけ耐えられるかです。
僕は40代の頃、何度も何度も失敗を繰り返しながらも、夢中で鍛冶場にこもって仕事をしていました。仕事を終えて鍛冶場を離れるともうフラフラで、すぐに眠り込んでしまうような生活を続けていたんです。
そういう厳しい仕事と対峙する中で、一つ自分を支える大きな力になったのが、零戦のエースパイロットだった坂井三郎さんとの出会いでした。坂井さんが80歳の時に、戦時中はいい刀を持てなかったので、改めて日本刀をつくりたいとご注文をいただいたんです。
その時に伺ったお話の中で、特に印象に残ったのが「二番だったら死んでいる」という言葉でした。「空中戦の時に少しでも自分の体調が悪かったら死んでいました。体調管理できない人から戦死しています。自分を律せなかったら、私はいまここにいません」と。
これには身の引き締まる思いがしました。
もし自分のつくった刀が二番の性能だったら、それを使った人は戦場で命を落としてしまうかもしれない。刀がそういう緊張感を伴ったものであることは、それまで頭では分かっていましたが、坂井さんのお話を伺って、実感として胸に迫ってきたのです。
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