アジア特化を模索せよ。国力の落ちた日本が再び輝くための条件

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各業界の勢いも落ち、「モノづくりニッポン」というかつての代名詞も物悲しく聞こえる昨今、このまま日本は沈んでゆくほか道はないのでしょうか。今回の無料メルマガ『ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」』では著者の嶌さんが、この国が再び輝くためにはどの方向に舵を取るべきなのかについて実例を紹介しながら冷静に分析しています。

国力落ちた日本、アジア特化目指せ

日本の政治に覇気がみえない。いや、政治だけではない。外交も経済も文化発信などもここ2、3年沈滞したままだ。元気が目立つのはオリンピックで活躍した若いアスリートや最年少で羽生名人に勝った将棋の藤井聡太四段(その後六段に昇進)ぐらいだ。若い人が活躍する姿は将来への展望が感じられていいことなのだが、それにしてもここ2~3年の日本の元気の無さは気にかかる。

輝きを失った電気業界など

例えば電気産業。先日、日本の電気業界をリードしてきたソニーの歴史年譜が新聞にでていた。1955年にその後のソニーの代名詞ともなった日本初のトランジスタラジオ、1968年にトリニトロンテレビを発売している(井深大社長時代─50~71年)。

特にトランジスタラジオの出現は世界を驚かせ、後に日本の貿易外交を“トランジスタ商人・外交”などと呼んだほどだ。70年代に入り、盛田昭夫氏が社長に就任(71年~76年、76年~95年会長を務める)すると歩きながらでも音楽を聞ける携帯音楽プレイヤー「ウォークマン」を79年に発売。日本の電気製品の名を一挙に世界へと轟かせた

その後を継いだ大賀典雄社長(89年~99年CEO)も家庭用ゲーム機「プレイステーション」やパソコン「VAIO」、犬型ロボット「AIBO」などを世に送り出し世界の耳目を集めた。

しかし、出井伸之社長(99~2005年CEO)、ハワード・ストリンガー(05~12年CEO)、平井一夫社長(12~18年CEO)の代になってから、「よその会社が作らないものを作るというソニーらしさが影をひそめ、もっぱら人員削減ばかりが目立つようになってしまった。

こうした傾向はソニーだけでなく他の企業にも蔓延し、自動車や家電産業、IT産業にも新しい技術発明製品が出なくなってしまった。この間、米国などではアップル、グーグル、フェイスブックなどの新製品や新サービスが次々と生み出され、自動車業界でもテスラなどの電気自動車やIT企業と協同した新しい製品、産業を次々と生み出し始めている。中国でもAIやインフラ、宇宙などへの進出が目覚しい。日本はいつの間にか世界の新市場を開拓する国力や気概を失ってしまったかのようだ。

企業の基礎研究、新陳代謝に遅れ

昨年11月1日に日本経済新聞がまとめた「日本の革新力(※1)」によると、新産業を生み続けるアメリカや急成長する中国に押され社会や産業を変革する人工知能などイノベーションの力が衰えていることを特集していた。

2016年の日本を100とすると、日本は1.06倍で最下位にあり、中国は6.34倍、韓国は2.08倍、ドイツが1.32倍、アメリカが1.24倍で日本は殆んど留まったままだ。

また応用開発力でも、国際特許の出願件数をみると日本は67%増ながら、中国は11倍に増え18年までに中国に追い抜かれるとみられている。さらに上場企業の営業利益合計(稼ぐ力)でもアメリカ28%増、中国7.3倍、ドイツ54%増、韓国66%増に対し日本は11%増と5ヵ国の中では最低となっている。株式公開から10年未満の企業の時価総額からみた産業の新陳代謝力でもアメリカ50%増の4.3兆ドル、中国6.3倍増の2.8兆ドルに対し、日本は51%減の5543億ドルと半分に減っているという。

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