日本に見切りをつけたトランプ氏と「ゴルフ外交」やってる場合か

 

ずっと失敗だった対米外交

安倍首相の対トランプ外交は実は、ほとんど失敗続きである。そもそも、16年9月の訪米時に「日米同盟を覆しかねない言動を繰り返すトランプ氏が大統領になることへの危機感」(当時の産経新聞報道)から、トランプを一切無視してヒラリー・クリントン=民主党候補との親密さを演出し続け、やがてトランプが優勢になり勝利してしまうと、一転、慌てふためいて、同年11月にまだ就任前のトランプをニューヨークのトランプ・タワーに訪問して1時間半も会談した。

しかしこれは、まだホワイトハウスの主がオバマであるという時に、外国の首脳として冒してはならない禁じ手で、実際、オバマの広報官は「米国には大統領は1人しかいない」と安倍首相の非礼を詰った。

しかもこの時に安倍首相がお土産にしたゴルフのドライバーが丸っきりの見当はずれで、当時本紙はこう書いた(CONFAB No.265 16年11月26日の項)。

【安倍首相のお土産の意味?】

 

安倍晋三首相がトランプにプレゼントしたゴルフクラブが、50万円ほどする「本間ゴルフ」製の最高級ブランド「BERES S-05」の中のまた最高級グレードの「5S」であることは、スポーツ紙などで数日前から報じられていた。5Sというのは、シャフトの最高級グレードを示す記号で、シャフトだけで1本25万円もする。トランプは早速梱包を解いてクラブを振り回し、「飛びそうだ」とご満悦だったそうだが、トランプがお返しにくれたのは自分が所有するゴルフ場のマークが入ったゴルフシャツで、まさにお互いの相手にかけた期待度の不均衡を象徴していた。

 

さらにおかしいのは、「本間ゴルフ」は日本の老舗ゴルフクラブ・メーカーには相違ないが、2005年に倒産した後、10年に上海の奔騰企業に88.7%の株式を買収されて傘下に入り、さらに今年10月6日には香港で上場を果たした、今やれっきとした中国系企業なのだ。『人民日報』日本語電子版「人民網」はこれを「安倍氏が保護貿易主義者であるトランプ氏に対する警告を暗に示したもの」と分析した(と韓国『中央日報』は書いているが「人民網」上では未確認)、もしそんな意図を潜ませていたのだとしたら、安倍首相もなかなかだということになる。

 

しかし実際は、官邸から「一番高いゴルフクラブを用意しろ」と言われた外務省職員が、本間ゴルフの八重洲店に飛んで行って買ってきた。BERESは本当は完全オーダー制なので注文から1カ月かかる。それでは間に合わないので、店頭に恭しく飾ってあった展示見本品を「これでいいから下さい」と鷲掴みにして来たというのが本当で、たぶんその職員は1カ月前に本間ゴルフが香港上場したことを知らなかったのだろう。

 

安倍首相はトランプに「TPPは“中国包囲網”戦略として大事なのだから米国が降りるのは困る」と言いに行ったんですからね。その目一杯張り込んだお土産が中国系企業の製品だったとは……。後になって知った官邸が「首相に恥をかかせた」と激怒してその職員をクビにしたりすることがないよう祈るばかりである。

付け加えれば、このクラブが完全オーダー制であるということは、その人のスイングを機械計測して、最適のシャフトの長さや硬軟やしなり具合、それに見合ったヘッドの重さやロフトや左右上下のバランスなどをすべて完璧に仕上げていくわけで、店頭に見本として置いてあったクラブをそのまま持って行ってトランプのスイングに適合するということは100%あり得ない。そういうこともわきまえずに、「高ければ喜ぶだろう」と思ったところに、安倍首相の外交&ゴルフ音痴が露呈している。

今度もしゴルフをするなら確かめてみればいいが(少なくともマスコミはそこに注目して報道すべきだが)、たぶんトランプはそのクラブを使っていないと思う。ゴルフを外交に活用するということは、もちろんあってもいいし、岸信介とアイゼンハワーとの間では実際にあって、安倍首相としてはそれを真似しているつもりなのだろうが、外交のスキルもゴルフの造詣も半端だと漫画になってしまう。

print
いま読まれてます

  • 日本に見切りをつけたトランプ氏と「ゴルフ外交」やってる場合か
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け