米英仏がわかりやすく「シリア攻撃」、真のターゲットはプーチン

 

「米ロ代理戦争」としての「シリア内戦」

振り返ってみます。シリア内戦は、2011年にはじまりました。「アラブの春」が流行っていた頃です。欧米、サウジアラビア、トルコなどは、「反アサド派」を支持しました。一方、ロシア、イランは、アサドを支援しました。この内戦は、最初から大国同士の「代理戦争」だったのです。

ロシアとイランがバックにいるので、アサドはなかなか倒れない。我慢の限界に達したオバマは2913年8月、「アサドを攻撃する!」と宣言します。ところが、同年9月、「やっぱりアサド攻撃やめた!」と戦争をドタキャンし、世界を仰天させました。これでオバマは、「史上最弱のアメリカ大統領」と批判された。

なぜ「ドタキャン」したのでしょうか? 理由は二つありました。一つは、プーチンが、「アサドは化学兵器を使っていない!」という情報を大拡散したこと。

プーチン大統領は記者会見で「シリア政府がそのような兵器を使ったという証拠はない」と述べた。また、シリア反体制派に武器を提供するという米の計画を批判し、「シリア政府が化学兵器を使ったとの未確認の非難に基づいて反体制派に武器を提供するという決定は、状況をさらに不安定化させるだけだ」と語った。

 

プーチン大統領はまた、反体制派が化学兵器を使ったことを指し示す証拠があるとし、「われわれは化学兵器を持った反体制派がトルコ領内で拘束されていることを知っている」と述べた。さらに、「反体制派が化学兵器を製造している施設がイラクで発見されたという同国からの情報もえている。これら全ての証拠は最大限真剣に調査される必要がある」と強調した。

(ウォール・ストリート・ジャーナル2013年6月19日)

世界ではいまだに、「アメリカは『イラクに化学兵器がある!』とウソをついて戦争を開始した」記憶が新しい。それで、「オバマは、ウソをついてるんちゃうの?」と慎重になった。

そして、第2の理由は、イギリスがオバマを裏切ったこと。

シリア軍事介入 英、下院否決/米、対応苦慮/仏、参加崩さず
【ベルリン=宮下日出男、ワシントン=小雲規生】

 

シリアのアサド政権による化学兵器使用疑惑で、英下院は軍事介入に道を開く政府議案を否決した。有志連合による介入を準備してきたオバマ米政権には痛手となる。

(産経新聞 2013年8月31日)

こうしてオバマは、「プーチンのせい」で戦争ドタキャンに追いこまれた。「オバマはうそつきだ!」と大胆に主張するプーチン。オバマは激怒したことでしょう。

「戦争ドタキャン事件」から2カ月後の2013年9月、ロシアの隣国ウクライナで、「反ヤヌコビッチ大統領デモ」が起こります。ヤヌコビッチは、「親ロシア」。そして2014年2月、革命が起こり、「親ロシア」ヤヌコビッチが失脚。激怒したプーチンは、同年3月、「クリミア併合」をして世界を仰天させました。

「シリア戦争ドタキャン直後」に起こったこの事件。普通に考えても、「偶然じゃないよね」と思えるでしょう。

そのとおり。「ウクライナの革命は俺がやったのだとオバマは認めています。「ロシアの声」2015年2月3日付から。

オバマ大統領 ウクライナでの国家クーデターへの米当局の関与ついに認める

 

昨年2月ウクライナの首都キエフで起きたクーデターの内幕について、オバマ大統領がついに真実を口にした。恐らく、もう恥じる事は何もないと考える時期が来たのだろう。CNNのインタビューの中で、オバマ大統領は「米国は、ウクライナにおける権力の移行をやり遂げた」と認めた。別の言い方をすれば、彼は、ウクライナを極めて困難な状況に導き、多くの犠牲者を生んだ昨年2月の国家クーデターが、米国が直接、組織的技術的に関与した中で実行された事を確認したわけである。これによりオバマ大統領は、今までなされた米国の政治家や外交官の全ての発言、声明を否定した形になった。これまで所謂「ユーロマイダン」は、汚職に満ちたヤヌコヴィチ体制に反対する幅広い一般大衆の抗議行動を基盤とした、ウクライナ内部から生まれたものだと美しく説明されてきたからだ。

「う~む本当だろうか~~???」

それでも信じることができない人は、「YouTube」で「Obama admits he started Ukraine revolution」を検索してみてください。

シリアに話を戻します。シリアには、「アサド派」と「反アサド派」があった。ところが、「戦争ドタキャン」後、新たな勢力が台頭してきた。それが、いわゆる「イスラム国」(IS)。ISは、「反アサド派」から独立し、勢力を急速に拡大していきました。

ISは、残虐行為とテロを繰り返す。オバマも放置できなくなり、2014年8月、「IS空爆」を開始します。ところが、ISは、依然として「反アサド」でもある。それで、「ISは敵で味方」という変な状態になった。結果、アメリカの空爆はまったく気合が入らず、ISの勢力は拡大する一方でした。

2015年9月、プーチン・ロシアがIS空爆を開始。プーチンの目的は、「同盟者アサドを守ること」。オバマのような迷いがないので、ISの石油関連施設を容赦なく空爆した。それで、ISは、弱体化したのです。

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