受刑者逃走、未だ捕まらず…検討始めた「GPS監視」は本当に正しいか

 

「刑期をおえて出所するときには、『二度と戻ってきません!って言うんです。あのときの気持ちにウソはないと思います。でも、また戻ってくる。特に正月が近づくと、アンパン一個盗んで塀の中に戻ってくる。なんとか生活できるヤツも多いのに、戻ってきちゃう。居場所を求め刑務所に戻る。これも、現実なんです」

こう刑務官の方が話してくれましたが、塀の中で贖罪意識が醸成され、仕事への意欲を高め、しっかりと自立した生活をしよう! がんばろう!と気概を高めても、就職先がないのです。

そして、戻る場所もない

運良く「協力雇用主」の企業に就職できても、前科ものだと偏見の目で見られる。

その“まなざし”に耐えられず、自分の殻にこもり、他者と関わりを避け、孤立し、やがて「働いて自立して、がんばって生きて行こう!」という気持ちも失せ……、また犯罪に手を染めてしまうのです。

今回の逃走事件で、国はGPSを利用した受刑者の監視の検討を始めたと報じられています。

私は……、正直な気持ちを言うと……、このことが少しだけ残念です。もちろん脱走は問題です。でも、監視ではない方法で脱走を防ぎ、アンパンひとつ盗んで戻ってくることのない教育方法はないのか? そう思えてならないからです。

ノルウェーの刑務所は、塀がないことで知られますが、再犯率世界最低20%です。

殺人などの凶悪犯の刑務所にはさすがに塀はあり厳重に警備されていますが、塀の中では自由に受刑者たちが暮しています。

自分の部屋の鍵は自分で管理し、絵を描き、哲学の勉強をし、政治の勉強をしているのです。

「人の温かさ、互いに支え合うことの大切さを、普通の生活の中で学んで欲しい」というのが、ノルウェーの考えです。

私が訪問した日本の刑務所の塀は想像以上に高くどこまでもどこまで果てしなく高く、それまで一度も感じたことのない独特なものでした。

生きること、働くこと、年をとること、病気を患うこと、食べること、排泄すること……、そのすべてが「丸裸」に行われていて、それが妙に切なくもあり、人が人であろうとする健気さ、それを支える温かさ。無駄はないけど、決して無機質じゃない、行ってみないとわかりえない「生の吐息」が、そこには明らかに存在していました。

刑務所は社会の縮図」ーーー。こう刑務官の方はいいます。(つづく)

image by: Google Map(新来島どっく)

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デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』(2018年4月18日号)より一部抜粋

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