文書には、部下の矢野官房長が福田次官から聞き取った内容として以下のような記述がある。
私(福田事務次官)は女性記者との間でこのようなやりとりをしたことはない。音声データによればかなり賑やかな店のようであるが、そのような店で女性記者と会食をした覚えもない。音声データからは、発言の相手がどのような人であるか、本当に女性記者なのかも全く分からない。また、冒頭からの会話の流れがどうだったか、相手の反応がどうだったのかも全く分からない。
時には女性が接客をしているお店に行き、お店の女性と言葉遊びを楽しむようなことはある。また、仲間内の会話で、相手から話題を振られたりすれば、そのような反応をするかもしれない。
つまり、福田次官は接客業のホステスや同僚とエッチな会話を楽しむことはあるが、女性記者とそのような店で会ったことも、卑猥な話をしたこともないというわけだ。
だが、音声が自分のものであるかどうかにはまったく言及がない。自分が喋った覚えがないのなら、はっきり「ない」と言うだろう。
にもかかわらず、相手が分からないと空とぼける。あたかも、ホステスの女性などと遊びで交わした会話を週刊誌のスキャンダル記事に使われたかのような言い回しをする。
これらのコメントは、福田次官から聞き取ったというより、弁護士を交えて打ち合わせた内容であろう。さらに財務省大臣官房は、驚くべき呼びかけを行った。
財務省の記者クラブ(財政研究会)の加盟各社に対して、各社内の女性記者に以下を周知いただくよう、要請した。
- 福田事務次官と週刊誌報道に示されたようなやりとりをした女性記者の方がいらっしゃれば、調査への協力をお願いしたい
- 外部の弁護士に対応を委託しているので、調査に協力いただける場合は、別途お示しする連絡先に直接連絡いただきたい
相手が誰かは福田次官が知っている。女性記者と話したことを否定しなければならないから、名前を言えないだけである。あえてこんな呼びかけをする必要などまったくない。あきらかに、「出て来れるものなら出てこい」と女性記者に脅しをかけたのだ。
セクハラをされたと匿名で訴えている女性記者に、名を名乗れと言うのは、常識では考えられない非道なことではないだろうか。今後の財務省での取材にもかかわるぞ、という傲慢さが読み取れる。
女性記者が弁護士事務所に連絡できないと踏んで、「申し出がないから、福田次官のシロが証明された」とでも主張するつもりだったのだろう。
いくら連絡先が財務省ではなく弁護士事務所であっても、財務省の顧問弁護士である。けっして中立的とはいえない。次官個人のセクハラ問題に財務省の顧問弁護士が出てくること自体、おかしなことだ。