なぜ米の医療費は世界一高いか?ハーバード大が出した驚きの結果

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世界でも医療費がとてつもなく高額なことで知られている、アメリカ合衆国。なぜアメリカは日本の何倍も高い医療費がかかるのか、メルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』の著者で現役医師の徳田安春先生は、その原因が最近の研究によって「3つに集約される」ことが判明したといいます。やっと謎が解けたという、アメリカの膨大な医療費の理由とは?

医療費の国際比較でわかるアメリカの膨大な医療費

先進国のなかでアメリカの医療費がダントツに高いことは有名です。GDP当たりでみると、他の先進国の医療費は約11%ですが、アメリカの医療費は約18%です。ちなみに医療費比率のもっとも低いオーストラリアでは約10%。最近出されたハーバード大学の研究結果で、その要因が明らかになりました。

驚くべきことに、アメリカの医療費が高い要因は、これまで考えられていたこととは異なっていたことが、その研究から判明しました。これまで想定されていた要因は、医療機関への受診や入院が多いこと、臓器別専門医が多いために高額な医療手技が多いこと、などでした。

しかしハーバード大学の研究結果ではこのような要因は否定されました。日本を含めた他の先進国10カ国と比べた結果、アメリカでの医療機関への受診や入院は、実際には少ないことがわかりました。

アメリカでは、臓器別専門医が特に多いわけでもなく、他の先進国10カ国の平均と比べて、プライマリケア専門医と臓器別専門医の比率はほぼ同じでした。そして、高額な医療手技の頻度が多いわけでもなかったのです。アメリカでの総医療費に対する入院医療費の割合は約10%程度であり、先進国の中で最低の割合でした。

アメリカの膨大な医療費の謎が解けた

アメリカの医療費は高いですが、健康アウトカムも良いか、というとそうではありません。ハーバード大学の研究では、アメリカ人の平均寿命は他の先進国10カ国と比べて最低でした。最近はその平均寿命が歴史上初めて低下しているという現状にも直面しています。医療機関へのアクセスも良くありません。救急受診以外では、通常の外来受診で数週間待たされることはよくあります。

このようにアウトカムをよくしていないアメリカの膨大な医療費の理由は、以下の3つに集約されることがわかりました。1つ目は、医療システムにおける管理費用です。総医療費に対するその割合は約8%であり、先進国の中で最高値でした。他の先進国では、管理費用の割合は1から3%程度でした。

2つ目高額な薬剤費です。アメリカの患者一人当たりの薬剤費用は円換算で約14万円であり、先進国では約7万円なので、約二倍でした。そして、3つ目医師の高額な給与です。総合系医師の年間給与を比較してみると、他の先進国では870万円から多くても1600万円なのに対して、アメリカでは、なんと約2200万円でした。つまり、アメリカ人医師はほぼ倍の給与を得ているのです。しかも、アメリカのいくつか臓器別専門医は、総合系医師と比べてさらに倍以上の給与を得ています。なかでも、整形外科医や脳神経外科医の給与はダントツに高くなっています。

日本の勤務医の給料は診療科で異なることはほとんどありませんが、アメリカでは勤務医の給与も診療科で異なるのが常です。

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