なぜ武田薬品の「6.8兆円買収」を新聞各紙は悲観的に報じるのか

 

これまでの買収は失敗だった…

【毎日】は3面の解説記事「クローズアップ」のみ。見出しから。

3面

  • 武田 過去最大の買収
  • 6.8兆円 シャイアーと合意
  • 負債兆円重荷に

uttiiの眼

シャイアーが強い希少疾患の薬とは、注意欠陥多動性障害(ADHD)や遺伝性血管性浮腫などの治療薬。武田が強い消化器系やがんの分野と併せ、買収後は両者の重点5分野で売上高の75%を稼ぎ出すという。同時に、シャイアーが持つ米国内の販売網を活用して米国で稼ぐ狙いだと。

記事中盤に、《毎日》のユニークな視点が生かされている。

武田のウェバー社長は「時間を買う戦略」によって成長を実現しようとしているが、「企業買収だけでは収益増につながらない」(証券アナリスト)のも事実。実際、2008年に米ミレニアム、2011年にはスイスのナイコメッドを買収したが、それによって収益力の高い治療薬を揃えることはできていないという。開発中の新薬候補がなかなか育ち切れていないということに他ならない。

巨大化することにはもう1つメリットがあるはずだ。潤沢な資金を研究開発に投入することが可能となり、新薬の開発を進める上で有利になって然るべき…ところが、実際にはそうなっていない。さらに、巨大化といっても、今回の買収が完了してもまだファイザーの半分近くにしかならない。自前の新薬開発力はファイザーに遠く及ばないということだ。《毎日》はそこまでは書いていないのだが、早い話、少なくともウェバー社長になってからの買収戦略は失敗の連続だったということだろう。

記事の後段は、ファイナンスについて記述。買収後の有利子負債について、他紙とは違う数字を出している。 武田が現在抱えている1兆1,000億円の有利子負債に加え、買収資金として3兆円を三井住友銀行や三菱UFJ銀行から借りることになる。さらに、シャイアー自身が今現在抱えている2兆円程度の負債を足すと、合計で6兆円の負債になる。ヒット商品を生み出せなければ破綻の危機に瀕することにならないだろうか。

こうした状況に加え、新株の大量発行によって株式の価値が目減りするリスクを負わなければならないとしたら、武田の株主たちはこの買収を納得してくれるだろうか。記者は「株主の動向によっては今回の巨額買収も見直しを迫られる可能性がある」として記事を閉じている。

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