なぜ武田薬品の「6.8兆円買収」を新聞各紙は悲観的に報じるのか

 

高すぎないか?

【東京】は2面の左脇に記事。6面に関連記事。

2面

  • 武田、欧州大手7兆円買収
  • シャイアー 医薬世界9位に

6面

  • 武田 社運懸け巨額買収
  • 海外へ活路 財務不安視も

uttiiの眼

《東京》も基調は「不安」。

6面記事は、「新薬開発」よりも「扱う製品の分野を広げ国際競争力を高める狙い」に焦点を定めている。そこまで明言していないが、ウェバー社長が口にする「時間を買う戦略」にしても新薬開発にしても、結局は実際に稼ぎ頭になってくれるかどうかは分からない。いわば「海の物とも山の物ともつかない」代物だから、勘定には入れていない。確実なのは、販売網の拡充であり、シャイアーのものを武田の販売網で売り、武田のものをシャイアーの販売網で売ることによって、相乗効果を得るというのが当面目指されている…という評価のようだ。

そう考えると、1つ大きな「不安」が浮かんでくる。今回、「当初示した買収額を複数回にわたり引き上げるよう迫られ結局は7兆円に膨らんだ」点だ。買収によって得られる収益増と、その“代金”としての7兆円が見合ってくれるのかどうか。おそらく、株主の疑問もそこに集中するのではないだろうか。大した収益増も見込めず、6兆円の有利子負債に耐えていけるのかどうか。記事は、「高価格の薬品の販売が難しく国内市場の成長が期待しにくいとされる中、大型買収で海外に活路を見出そうとした武田。大きな賭けになるだけに経営者の手腕が問われる」としている。

あとがき

以上、いかがでしたでしょうか。

あまり取り上げない経済ものになりました。各紙の「違い」も比較的小さいものでした。ただ、その中で浮かんできたのは、こうした買収劇は、ギャンブルと紙一重なのではないかという感覚です。漫画に描くとしたら、経営者が宝くじを握りしめながら、「これさえ当たれば…」と呟いている姿でしょうか…。6兆円の有利子負債とは想像を超えています。恐ろしくなってきました。

それにしても、武田の社長がフランス人というのにも驚きました。

もともと、武田のような企業の自己認識は「江戸時代に誕生した老舗の薬問屋」という感じなのかと思っていました。それは明らかに古すぎですが、しかし、外国人社長と外国人取締役たちがグローバル戦略を展開して巨額のM&Aを仕掛ける…というのも、武田の企業イメージとしてはしっくりきません。どうなっているのやら…。

というところで、きょうはここまで。

また明日!

image by: Twitter(@TakedaPharma)

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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