ヤマザキ製パンのコンビニ店舗数は減少の一途をたどっています。97年には2,900店程度の店舗網を誇っていましたが、その後は減少が続き、17年12月末には1,553店にまで減っています。店舗数業界5位と言えば聞こえは悪くないのかもしれませんが、経営は厳しい状況にあるといえます。
ヤマザキ製パンがコンビニ運営事業に参入したのは1977年です。デイリーヤマザキが誕生する前に展開していたコンビニ「サンエブリー」が始まりです。翌78年にはコンビニ「ヤマザキデイリーストアー」の1号店が誕生しました。83年には両コンビニで1,000店を達成しています。
初期の頃の国内店舗数はセブン-イレブン・ジャパンとファミリーマート、ローソンの大手3社に劣らない規模を誇っていました。セブンが1,000店を達成したのは山崎製パンよりも3年早い80年のため山崎製パンはセブンに遅れをとっていましたが、一方で、ファミマが1,000店を達成したのは87年のため、ファミマよりも山崎製パンの方が4年早く1,000店を達成しています。
しかし、その後は山崎製パンが失速することになります。セブンは84年に2,000店を達成。ローソンはかつて存在したコンビニ「サンチェーン」との合計で86年に2,000店を達成しています。その3年後の89年にようやく山崎製パンが2,000店を達成しました。
その後、ヤマザキ製パンのコンビニ店舗数は伸び悩みます。現在の店舗数は約1,500店です。一方、セブンとファミマ、ローソンは加速度的に店舗数を伸ばしていきました。現在、セブンは約2万店、ファミマは約1万7,000店、ローソンは約1万4,000店、大手3社合計で約5万1,000店もの店舗数を誇ります。
なぜヤマザキ製パンと大手3社で店舗数にこれだけの差がでてしまったのでしょうか。事業主がメーカーか流通かという違いがまず考えられます。ヤマザキ製パンにおける流通事業はメーカー機能の補完的な意味合いがどうしても強くなってしまうため運営がおろそかになりがちです。そのため、ヤマザキ製パンのコンビニは大手3社と比べ、品ぞろえやクリンリネス、接客といった店舗運営の基本において甘さが目立ちます。これは大きな弱みといえるでしょう。
一方で、山崎製パンのコンビニには00年から始めた店内調理システム「デイリーホット」という独自の強みがあるにはあります。パンや弁当、サンドイッチ、総菜などを店舗内で製造するというもので、設置店舗ではできたてを提供することができます。これは大手3社のコンビニにはない独自の武器といえるでしょう。
ただ、圧倒的な店舗数の差により、その独自の強みがかき消されてしまっています。大手3社は店舗数の多さからくるバイイングパワーがあるため、高品質の商品を低価格で仕入れたり、ブランド力の高さがあるため、好立地の場所に出店することができます。一方、ヤマザキ製パンにはそれらがありません。